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15-1

 頭に靄がかかったようだった。私はふよふよと辺りを漂っている。ここはどこなのか。それは私にもわからない。広がっているのは、真っ暗闇だったから。‬


「私、一体何をしていたんだろう?」


 暗闇の中にいる前の私を思い出せない。ぼうっとしている。くらくらとする。ああ、私はどこにいるんだろう。同じ問いを何度も自分自身に投げかけるも返ってこない答え。私は――。


 ふと、揺り動かされたような感覚。まだ眠いというのに寝かせてはくれないのか。感じたのは不快感だった。あれ? 「眠い」、「寝たい」という言葉に首を傾げる。なぜかこの二つのワードが心の中で引っかかった。


 その二つのワードは、私自身のことを思い出す鍵ではないか。悶々と考えていると、今度は「トントン」と優しく肩を叩かれた気がした。不気味だ。現に私は肩に手の感触を感じなかった。だが、叩かれた感覚はある。私しかいない空間のはずなのに、おかしなことだ。


 一応、振り返ってみた。暗闇が広がっているだけで何も見えはしなかった。近くにいれば誰かの気配を感じるのに、それもない。これは恐ろしいことが始まるのだろうか。それとも、私自身の忍耐力でも試されているのだろうか。暗闇の中で一人過ごせと――。


「……ン、……ノン……、レ……」


 誰かの声が聞こえてきた。これは誰なのか。途切れ途切れで何を言っているのかはわからない。低めの声だった。この声の主はまるで焦っているように思えた。


「……て、……きて……ちょ……い。……て、……だ……」


 また、聞こえてきた声。今度は高い声。不快な声ではない。耳にすーっと入ってくる優しい音色のように思う。が、この声の主は慌てふためいているのか。それとも泣きそうになっているのか。私の耳に入ってきた声は震えを帯びているように感じた。


 突然、生温いものが頰にあたった。ポトポトと触れてくる。頰にあたるものは何なんだろう。それに、私は彼らが何を言っているのかも気になった。目をつぶり、耳を澄ましてみる。これで聞き取れなかった音を聞き取れるのかは疑問であるが……。


「……レ……。…………レノン!」

「起きて…………ぃ。……起きてちょうだい! レノンちゃん!!」


 暗闇に光が差し込んできた。はっきりと聞こえてきた声。それに私は引っ張られる。私は、たぶん寝ているのだろう。アイリスちゃんにもらった薬を飲んだことは思い出した。そして、呼び起こされた私は目覚めようとしているのではないだろうか。


 私は光に引き寄せられた。きっと私を呼ぶ声のもとへ私は行くのだと思う。

Copyright(C)2020-莱兎

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