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2-2

 隣にいる子は眠ってしまった。試作品段階でも効果はあったようだ。無色無臭の液体のために、入れたことにも気づかれなかった。バクバク食べてたけど、味に変わりはあったのだろうか。頭に血が上っていて気づかなかったか、味に変わりがなかったか。判断できない。また、試してみよう。


「店主、ご協力感謝します。隣の子のお代も置いていきますね」


 注文の品が入っている袋を差し出された。それを受け取る。僕は、それを持ち、隣の子を家まで運んだ。

起きた彼女は、僕を見てなんというだろうか。彼女の反応がどういうものであるか、楽しみだ。


***


 私は寝てた。やっと眠ることができた。六日間も寝てなくて、頭がガンガンしてた。それがちょっと直っている。どれくらい寝てたのだろうか。わかることはこのような気分の良い目覚めは、久しぶりだと言うこと。


「ここどこ?」


 食事処にいたはずだ。ベッドにいるのは、おかしい。私、どうしたんだっけ? お気に入りのサラダを頼んで、邪魔された。それを食べようとして、邪魔された。食べたら、変なことを言われて、私の体に異変があった。散々な時間だったな。


「そうだ! あの隣にいたクソ野郎どこに行ったぁぁぁぁ!!」

「ここにいますよ。うるさいですね」

「はっ?」


 お前のことで騒いでるんだよ。誰のせいでこっちが迷惑してると思ってるんだ。それもあるけど、お前、どこから現れたんだよ。表情に出てたのだろうか。


「いや〜、あなたの寝ているところを観察してたんですけど、水がなくなったので取りに行ってました」

「はい? 今なんて言った?」

「あれ? 耳が遠いんですね。でも、二度説明する気はないので、想像でもしてください」


 こいつ、うざい。水がなくなるまでは、人が寝てるところをずっと見てたってことだよね? 気持ち悪い。新手の嫌がらせでもされてるのかな。


「えっと、ここは僕の家で、研究室と併設されています。部屋数は……、空きはあるので、問題ないですよ。あなたは今日からここに住むんです」

「えっ? 誘拐されて、その誘拐犯の家に住むの? 決定事項なの? そんなの嫌よ。私は、帰る」


 ベッドから出て、外へ出ようとする。私の肩に手が置かれたが、振り払った。足を進めるも、迷うのようなことを言われる。


「眠れない姫さまは、よく眠れないんですよね? 僕の薬、どうでしたか? 僕の薬の実験台になってくれるなら、あなたが寝れる薬を作って差し上げます」


 私が眠れる薬を作ってくれる。天秤がグラグラ揺れた。家に帰るか実験台になるか。前者は、誘拐犯の下でこき使われて一生を過ごす人生。後者は睡眠の問題がたぶん解消する人生。でも、私が寝れる薬が作られたら、私は存分に寝ることができる。睡眠について悩むこともなくなる。どうせ、家に帰っても寝れないのが続く。それなら、私はこきつかわれる方を選ぶべきではないだろうか。それに、こいつが作った薬は私に効いた。どんどん傾いていく天秤。


「自分の家に帰るって言ったら、これから何度も何度も家に向かうから安心してくださいね」


 しつこい人間は嫌われるっていう言葉を知らないのか。それに、安心できるところがどこにもないから。傾いていた天秤が、揺れる状態に戻った。

 こんな執念深そうな人間と一緒に住んだら、酷い目に合わないか。だが、家に何回も足を運ぶと目の前のやつは言った。その鬱陶しさに私は耐えられるだろうか。悶々と悩むも答えはでない。


「はい、くじを作ってみました。箱に入ってるので、引いてください。あたりだったら、僕の家に住みます。はずれだったら、家に帰ります」

「なぜ運任せ?」

「決まりそうにありませんから、こういう時は運任せかと……」


 こいつの言葉に耳を傾けるのもどうかと思ったが、運任せもありかもしれない。私の運がこれからのことを決める。私の運が選んだものだから、私が決めたことだ。


「わかった。引くから箱を寄越しなよ」


 箱の中に手を突っ込み、ゴソゴソと紙を選ぶ。一枚掴んだ。手を箱から出す。掴んだ紙を見る。書いてあった文字は……、あたり。私は、こいつの薬の実験台として、この家に住むことになった。

 あとで知ったが、箱の中身は全部あたりだった。はめられたと気付いたときにはもう遅かった。


Copyright(C)2019-莱兎

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