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14-2

 突然、現れたアイリスちゃん。彼女は私の味方ではなかった。私と息子(アディク)だったら、息子を選ぶよね。私はアイリスちゃの娘になるなら大歓迎。けれど、アディクの運命の相手になるのは嫌だ。……もう手遅れ感はある。


「アイリスちゃんは、私とアディクに結ばれて欲しいと思うのはなんで?」

「それは、可愛い娘が欲しいもの。それに、大切な息子が壊れてしまうのは嫌なのよ」

「僕は壊れたりしませんよ、お母様。変なことを言わないでください」


 アイリスちゃんに噛み付くアディク。あのね、私たちの会話を邪魔しなくていいから。大人しくしてて。私を抱きしめながら、警戒している彼。ガルルルルッと唸っている犬みたいだ。


「運命を手に入れられないなら、壊れてしまうに決まっているでしょう? 運命を見つける前には戻れないのだから」

「そんなの関係ありません。僕とレノンは結ばれるのですから。心配ご無用です」

「あら、あなたに怒り、怯えている子と結ばれるのは無理なことよ」

「誰のことを言っているんですか?」


 誰って、私のことに決まっている。ここに、アイリスちゃんとあなたと私以外に誰がいるんだ。私たちの中で可能性があるのは、あんな物騒な話を聞いていた私しかいないだろう。監禁とかありえないから。そんな生活するの嫌だから、今から逃げたくなるわ。


「あなた、レノンちゃんのことが好きで好きでたまらないくせに、本人のことをちゃんとみてないのね」

「レノンのことなら僕が一番良くわかってます。お母様は口を出さないでください」


 アディクに言われた言葉に対して、フルフルと震えているアイリスちゃん。その握り締めている拳で、何をするつもりなんだろうか。どうか私を巻き込まないでください。


「アディク、お母様の言葉は真摯に受け止めるべきものなのよ。あなたのために言っているんだもの」

「僕にとっては迷惑なことです。押し付けてこないでください」

「……ふぅ、わかったわ。ええ、十分にわかりました。レノンちゃん、今日からここに住みなさい。息子の家に帰る必要はないわ」


 あれ? アディクの味方じゃなかった? 私としては嬉しいことだから、アイリスちゃんに駆け寄りたいくらい。彼の腕から抜け出せたなら、走り寄ったのに。


「ふざけたことを言わないでください。レノンは僕のです!」


 抱きしめる力が強い。私、潰される。


「女の子はそんな力強く抱きしめてはいけないの! あなたは、女の子の扱い方を学び直すべきよ!!」

「お母様の教育はもう受けたくありません。お母様を対象としての練習はもういいです。あれで、何度打たれたことか……」


 何に打たれたのよ。聞くのが怖いから聞かないけれど、随分とハードなことをされてたんだね。


「余計なことをしゃべるのはその口ね! 私が今から塞いであげるから」

「僕の口を簡単に塞がせません。レノンに気持ちを伝えられなくなってしまいます。例え、お母様が強い魔女だとしても、僕は何もせずにやられてやりません」

「まあ! あなたにそれができるのかしら? ふふふ、とりあえず苦しそうなレノンちゃんを離してあげましょうね」


 フワッと浮かんだ体。アディクが「レノン!」と私を呼んだ。彼に手を伸ばされたが、私はその手を掴まなかった。それに、彼は目を丸くさせる。逃げようと考えている私が、その手を掴むことはない。彼と私の距離は物理的に開いていった。


 空を切った自分の手を見つめるアディク。彼は何を思っているのだろうか。次の瞬間には、キッとアイリスちゃんを睨みつけていた。

 そして、私は口を挟む暇もない親子喧嘩に巻き込まれていく。


Copyright(C)2020-莱兎

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