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13-3

 アディクの話を聞いて、顔が引きつった。


「ねぇ、もしかしなくても、魔女はアディクで、少女は私であってる?」


 アディクは頷いた。

 その頃には、すでに私の顔色は、真っ青を通り越して真っ白になっていたと思う。いや、怖いから。そこまで執着されているとも思わなかったもの。


「僕はレノンを愛しているんです。僕にはレノンだけなんです! 逃げられたら、生きていけません」


 アディクにギューギュー抱きしめられる。しかし、私は今、それに抵抗する気力はなかった。現実逃避したかったのだ。

 アディクの私への愛が重い。重すぎる。この話聞かない方が幸せだったかもしれない。自分から話せと言っておいてと何を言っているのか。だが、こんな気持ちになるとは思わない。

 私は初めて「コイツ、危険人物では?」と思った。


「レノン? さっきから黙っていてどうしたんですか?」

「……」


 アディクの問いに返答できるほど、私の気持ちは落ち着いてはいなかった。話が凄すぎてついていけていないというのもある。なにより、言葉が出てこなかった。


 アディクが私に呪いをかけていた。眠れないのとは別のもの。しかも、彼の意思で……だ。

私を誰かに取られないように、私に逃げられないように、呪いをかけていた。うん、何も聞かなかったことにしたい。まず、話を理解したくない。気をつけないと、頭から内容が飛び出て行ってしまいそうだ。頭が痛い話だ。


 はあ、呪いとは簡単に人へかけても良いものなのだろうか? 私、アディクのせいでとても被害にあっていたのだと今更気づいた。うん? あいつのせいで私は私は……。


「お前のせいかっ!! この鬼畜野郎! 母親が家から出て行ったのも、私の見目が良くなかったのも全部お前のせいだったのかっ!!」


 私は彼の腕の中から、顔を覗かせた。全ての元凶がこいつだったことに、イラつきはおさまらない。目を細めてやつを睨みつけた。しかし、アディクには効いていない様子。パチパチと目を瞬きさせている。なんで惚けた顔をしているか。お前がやったことだろう。怒りはふつふつと沸いてくるばかりだ。


「僕、何か悪いことをしましたか? レノンが他の人に取られたら、その人を殺してやりたくなります。レノンが逃げたら、僕がいないと生きていけないとわからせてあげる必要があります。レノンが嫌がる人殺しにならないように、僕はちゃ〜んと考えたんですよ? かけた呪いの全部が全部悪いわけではないと思います」



 アディクの唇は弧を描いていた。こいつ、なんてやつだ。私を手に入れるためだったら、なんでもやる。


「僕はレノンがこの世で一番大切です。僕の愛する人なんです。僕のレノンを奪うなら、後ろから刺されても、崖の上から落ちても、たまたま毒を飲んでしまってもしょうがないことですよ」


 何もしょうがないことなんてないから。重大な事件が起こってるから。というか、その事件、絶対に私に近づいた人間が襲われてるよね? もしそんな事件が耳に入ってきて、私の近くの人間がいなくなったら、全部お前が犯人であるとしか考えられない。


 アディクのうっすらと笑ってる姿がとても不気味だ。距離を取りたいくらい。


「レノンは僕から逃れられませんよ。それより、いいんですか? 眠れない呪いの方は?」


 お前の頭のネジは一、二本どころか、三、四本以上飛んでいる。それを知り、自分の身の危険を悟ったら、眠れない呪いを解くのはいいことだとは言えないような感じがする。

 なんだか嫌な予感がするんだ。アディクにあの言葉を言って呪いを解くより、逃げるべきではないか。これは、一時の気の迷いだろうか。いや、捕まったら、一生……私は……。


「ああ、逃げるなんて考えているなら、やめたほうがいいですよ? 鎖に繋がれて生活したくはないでしょう?」


 こいつ、本気でヤバいやつ。唇は笑みを浮かべているけれど、目は仄暗くて冷たい。

 誰か、いや、アイリスちゃん。こいつの母親であるあなたに、今すぐ助けて欲しい。今すぐ、今すぐだよ。だが、アイリスちゃんは息子であるアディクの味方であった。

 ああ、私を助けてくれるものはいないようだ。泣きたい。


Copyright(C)2020-莱兎

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