13-1
アイリスちゃんは綺麗な微笑みを浮かべて、出ていった。現在は、私とアディクの二人っきりである。
私は彼の話を聞くと言った。だから、ちゃんと聞きたいとは思っている。それに、自分の言いたいことも言うつもりだ。魔女の話を彼が正直に話してくれるかもしれない。もし真実を話してくれたなら、私の気持ちも素直に打ち明けよう。アディクの話を聞くって言ったのは私。嘘はつきたくないから、耳を傾けるの。
ここに調子が良すぎる者が一人いる。また、話を聞くにあたり、納得できないことが一つある。
「あははははははは。さあ、レノン。僕の話を聞いてもらいましょうか?」
「はっ!? 何言ってんの? この体勢で話すわけ?」
私はアディクの腕の中にいた。彼を見上げると、ニコニコと笑っている。とても機嫌が良さそうだった。
私たちは近くにあった椅子に座っている。椅子はいくつかあるのに、なぜか私は彼の膝の上に座ることになってしまった。
アディクに「レノンはこっちです」と手を引かれた。その時、私はその手を振り払うことができなかった。強引さと素早さを兼ね合わせた行動だった。私が反対する隙もなく、後ろから抱き込まれた。
「もう、レノンと離れたくありません。このままくっついていたいです。ああ、レノン。あったかい」
「調子に乗らないで! 話はどうしたの?」
「ゆっくり話しましょう。今はレノンと触れ合っていたいです」
「はぁ、ふざけないで。何も話さないなら、アディクとは口きかないから。それに、触るのも禁止。私と会うのも禁止。視界に入るのもダメだからね」
ピタッと固まったアディク。ゆっくりと私の方を向いた。私を見下ろす、彼の目とあう。彼は引きつったような笑みを浮かべている。
「そんな……レノンは僕が嫌いなんですか?」
「嫌い。早く話てくれないから」
「僕はレノンと二人の時間を穏やかにのんびりと過ごしたいです。今までの離れていた時間を埋めたいです」
「はぁ、アディクが話す気ないなら……」
やんわりと口を手で塞がれた。私は言葉を紡げなくなる。口から出てくるのは「うぅ〜」という呻き声のみ。アディクに目で訴えかけたが、口から手が離れることはなかった。
「レノンが僕に寂しいことを言わないようにしたいです」
何が寂しいのかさっぱりわからない。私にひっついて、真実を隠す気でいるなら――。二度と会わないと言おうとしただけ。それが嫌なら、私に事実を打ち明けるべきだ。アディクは、どちらを選ぶ? 話す? それとも、隠す?
「僕だってわかっています。レノンに話さないといけないことくらい、わかっているんです。レノン、お願いがあります。僕が全てを打ち明けても、僕から離れていかないでください」
「それは……、話の内容によるよ」
辺りは沈黙に支配された。
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