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12-2

 椅子に座っているアイリスちゃん。紅茶で一服し、立っているアディクを見据えていた。アイリスちゃんは彼に睨まれていることを物ともしない。彼女は余裕そうな表情だった。彼女は彼の悔しそうな表情を見て、うっすらと微笑んでいた。


「老婆心ですか? 歳も歳ですから、世話を焼きたがるものわかりますが、不要なことですよ。お母様に言われなくてもわかっているつもりです」

「お前が息子でなかったら、追い出していたわよ。そのわかっているつもり(・・・)が、危ういということに気づきなさい」

「お母様はご自分の息子である僕を信じていないのですか?」


 アイリスちゃんは返事をしなかった。下を向いて黙り込んでいる。アイリスちゃんは唇を引き結んだ彼にじっと見つめられていた。

 黙っている二人。先に口を開いたのは――。


「もう面倒だから、やめることにするわ。この馬鹿な息子にちょっと力を貸そうと思った私に言ってやりたいわね。自分の好きなようにやるべきだって。あなたのことを考えていたけれど、やめることにします」

「ええ、僕はお母様に力を貸して欲しいとは頼んでいませんからね。勝手にしたことを僕に押し付けて、後から借りを返せと言われるたら嫌です。ぜひ、自分の思うがままに動いてください」

「お前、その言葉忘れないでちょうだいよ」


 ふと、アイリスちゃんが私を見た。目が合う。私はなんだろうと首を傾げた。が、嫌な予感がする。


「ねぇ、レノンちゃん。私の義娘にならない?」

「えーーっと、どういうことですか?」

「ふふふふふ、養子にならないかと聞いているの。アディクとは結婚できなくなるけど――」

「お母様、ふざけないでください。レノンは僕のです。……レノン、お母様の養子になるのはダメですから! 絶対に許しませんから!!」


 私を除いて話していた二人に心の中で不満を吐いていた。けれど、面倒そうなところで私を巻き込まないでほしい。泣きたくなった。


 私が養子の件を受け入れようが受け入れまいが、アディクには関係ない。だが、私は彼に肩を揺すられていた。ぐらぐらする体。酔う。やめて。それに、掴まれている肩が痛い。力強すぎ。


アディク(・・・・)、レノンちゃんを離しなさい。苦しそうにしているのが見えてないの?」


 アイリスちゃんは座っていて、物理的なことは何もしていない。だが、アイリスちゃんの言葉でアディクの動きが止まった。肩を掴んでいた彼は私からさっと離れる。


 助かった。アイリスちゃんが何をしたのかはわからなかったけれど、肩が解放されてよかったと思う。じんわりと鈍い痛み起こっているため、無事というわけではない。また、気持ち悪くもなった。


「お母様!!」


 突然、大きな声が響いた。アイリスちゃんはアディクにギロッと睨まれている。


「好き勝手にしていいと言ったのはお前よ。それなのに、邪魔してこないでちょうだい。私はレノンちゃんに聞いているの。そこでおとなしく立っていなさい!」

「お母様こそ僕の邪魔をしないでください! レノンは僕の運命なんですよ! お母様だってわかっているでしょう?」

「だから、なに? アディク(・・・・)は黙っていなさい」


 ピシャリとアイリスちゃんに言われ、黙り込んだアディク。彼女はそれを見て微笑んだ。そして、再び私に問いかける。


「レノンちゃん、私の養子になって? 私の養子になればいいことがあるわよ。息子から守ってあげるわ」

「れ、の、ん……」

アディク(・・・・)、黙りなさい」


 四つの瞳がじっと私を射抜いた。私は、どうしたいのだろうか。

 信じたいと思えなくなったアディク。彼は真剣な眼差しをしていた。じっと私を見つめていた。私だけを見ていた。そんな顔をされたら、――。


「アイリスちゃん、考えさせてください」

「どうして? レノンちゃんは、息子に会うのも話すのも嫌がってたわ」

「今でも話したくない気持ちはあります。でも、アディクが真っ直ぐに私を見ているから……。話くらいは聞いて、決めようと思います」


 ニヤリとアイリスちゃんは笑った。選択を誤ったように思うのは、気のせいだろうか。私の顔はこわばった。


Copyright(C)2019-莱兎

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