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12-1

 母に会いたかった。子供の頃に迷子になった私は願った。魔女に願いを叶えてもらった。母を連れてきてもらえるという言葉を信じた。子供の私が願ったものが叶えられた。その代わりに私は呪われてしまった。眠ることができない呪いの体を得た。私はそのことを悩み続けている。


 私の願いを叶えた魔女がアディクかもしれない。彼は私が知っている魔女かもしれない。私が「呪われる」と言った魔女かもしれない。もし彼が私のことを知っているなら、私は近くにいる彼に騙されていた。どうして彼は黙っていたのだろうか。どうして彼は私に薬を作ったのだろうか。


 彼が魔女と告白するだけで、私は眠れるようになっていたはずだ。彼は無駄に問題を長引かせた。薬を作り、私の問題を一時的に解決させる手段をとった。なぜ、アディクは私に何も話してはくれなかったのか。彼は私がずっとある魔女を探していたことを知っていたはずだ。それに、私が「見つけた」といえば、眠れない呪いは解けていたと思われる。


 アディクはどうして自分が魔女だと話してくれなかったのだろうか。話したところで私が探す魔女の存在だと気づくかはわからない。だが、話して欲しかった。眠れない体で悩み続けて、劇薬と言われる薬に頼らないと眠れない私。そんな忌まわしい体のことを知っていたはずなのに、何も言ってはくれなかった。

 彼は酷い。私がある魔女を探していたことを知っていただろうに何も言わなかったんだから。今、私は彼を信じられない。信じようとも思わない。


「あなたと一緒に帰る? ふざけないで。私はあなたの家になんか帰らないわよ」


 私はあなたのおもちゃじゃないのよ。どうせ、私が何も知らないのを嘲笑って見てたのよね。許せないわ。


 微笑みを浮かべて、固まっている彼。苦労して、私が寝れる薬を作ったのよ。ほとんど、アイリスちゃんが作成したものだけど、私はできた薬に喜んでたの。それを邪魔したことも許せないわ。


「アイリスちゃん! この男、追い出してください!!」

「あらあら、レノンちゃん。条件を忘れてしまったのかしら? 息子と会う約束だったわよね?」


 ほがらかに笑う彼女。そうだった。私を雇うかわりにアディクと会う条件があった。うぐぅ、悔しいけど我慢するしかない。こんな男と話したくないのに。


「はっ! アイリスちゃん。この人はアイリスちゃんの息子を語った誰かです。早く追い出しましょう!!」

「良い案を思いついたという顔で言ったら意味ないと思うわよ。それに、彼は正真正銘、私の息子です。拒絶反応がないもの」

「拒絶反応ですか?」

「ふふふふふ、で? 私の息子はいつまで固まってるのかしら? 信頼関係を築けていないあなたが悪いのよ。変なことを考えてないわよね?」


 無視された。拒絶反応ってなんのことだろう。考えてもわからなかった。ただ、アイリスちゃんの言葉でアディクは現実へ戻ってきたようである。


「お母様には関係ないことです。部外者は黙っててください。僕とレノンは信頼関係を築けてますから、余計なことです」

「逃げられておいて信頼関係を築けてるって……、本当にそんなこと思っているの? 強がりはよしなさい。二人に必要なのは話し合いよ。強引に事を運ぶべきではないわ」

「うるさいです、お母様。僕は強引に何かをしようとは思ってい――」

「レノンちゃんを実力行使で連れて帰ろうとしている人間の言うことではないわ。いい加減にしなさい、このヘタレ!」


 ムッと顔をしかめるアディク。口元がピクピクしていた。一方で、アイリスちゃんはとても綺麗な笑顔である。なんだか、この二人が怖くなってきた。立ち込める暗雲に目をそらしたくなるが……。


「僕はヘタレではありません! それに、お母様にとやかく言われる筋合いはないです。この問題は僕とレノンで解決することです」

「ふ〜ん、だから? レノンちゃんが逃げたらどうしてくれるのよ。私の義娘になる子よ。私の息子が失敗したら、どう責任取るのかしら?」

「いつからお母様の義娘になることが決まったんですか! レノンは僕のですよ。だいたい、僕は失敗しません!! 僕はレノンがお母様に気に入られてしまうとわかっていました。だから、会わせたくなかったんです!」

「だったら、逃すべきではなかったのよ。私に会わせたくないのなら、逃げ道を塞いでおくべきだったわ。甘いのよ、お前。手に入れたくてしょうがないものは、なによりも大切にするべきだわ。お前は、それをわかっているのかしら?」


 バチバチと火花を散らせる二人。親子で言い争いしてないで、私の意見を聞き入れて欲しい。それに、私は誰のものでもない。私は私のものだ。はぁ、当人である私を置いて、喧嘩をしないで。

Copyright(C)2019-莱兎

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