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閑話2

 髪の隙間から赤く染まっている耳が覗いていた。隠せてはいない彼女に思わず笑みがこぼれた。


「もう! 何笑っているんですか! 私とアディクのことを聞くアイリスちゃんこそ旦那さんとはどうなんですか?」


 楽しい気分が一瞬にして吹っ飛んだ。カチッと動きが止まる。レノンちゃんは知らないから、たやすく聞けたのだろう。頭の片隅で思い出してしまった男を想像で殺した。何度も何度も私自身が持つナイフで刺した。


「ふふっ、ふふふふふふふふふふふ」

「えーっと? アイリスちゃん??」


 引き気味に私を見ているレノンちゃん。困惑しているようだった。質問から、急な不気味な笑いが響いたら、誰でも戸惑うだろう。そんなことを思いながらも、笑いは止まらない。


「ふふふふふふふふふふふふふふっ! あはははははははははははははーーっっっ!!」

「あ、アイリスちゃん? ど、どうかしたんですか? 怖いですよ?」


 うん、私自身わかってるけど、抑えられないのよ。あの男の浮気癖は最悪だったわ。綺麗な女性を見れば、デレデレして手当たり次第に手を出した。そのせいで、私は彼の数多の女との厄介な揉め事に巻き込まれた。

 あの男は「君が一番だよ」なんて甘いセリフを吐いたけど、全部嘘。たくさんの女がいる中で、どこに安っぽい言葉に騙される頭空っぽな人がいるのか……。


 純情だった頃の私はコロッと騙されたけど、長年付き合っていれば愛想も尽きるというもの。私自身あんなのと付き合っていたかと思うと腹が立ってしかたない。

 我慢ならなくて、平手打ち三発と鼻をへし折って別れたことは一生忘れられないことだ。あのふざけた男と付き合った記憶も忘れられないことだと思っている。


「ふふふふふふふふふっ、レノンちゃん」

「はい?」

「世の中には聞いてはいけないことが山ほどあるのよ」


 レノンちゃんは何も言わなかった。ただ、激しく何度も首を縦に振っていた。


「そんなに首を振ったら、取れてしまうわよ。ふふふふふふ」


 私が言ったことに、彼女はピタリと動きを止めた。彼女は「アイリスちゃん、怖い……」とボソボソ呟いていた。あんまり揶揄いすぎると嫌われてしまうから、「聞こえているわよ」とは言わなかった。

 もし言っていたら、どんな反応が返ってきていたのだろうか。意地悪しなかったことに少し後悔している。



 顔がいいだけの男と付き合うべきではないと、あのときのことで学んだ。私が付き合っていたのは、同族だ。魔女は男の割合が低く、女の割合が高い。男の競争率は必然と高くなる。

 女が集まってくる中で調子に乗り、あんなふざけたやつになってもおかしくはない。やられたらすっごいムカつくけど。


 あの後、振ったあの男にストーカーされるようになった。うっとおしかったので、すぐさま退治した。

 男はもういらない。けれど、私は子供が欲しい。

 付き合っていくなら、断然、外見の良い人。私は適当に見目のいい男を選んだ。妊娠したことがわかると、私はその男をすぐに捨てた。


『もう男と付き合うのはこりごりよ』


 生まれる子が男だとは思いもよらない。私には運がなかった。

Copyright(C)2019-莱兎

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