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11-3

 レノンの行き先は推測せずともわかる。木についた目印を辿っていけばいい。そうすれば、おのずと街に着く。行き先を示すものを残した彼女に、僕は愛おしさがこみ上げた。


「馬鹿だな〜。逃げたところで君は捕まるだけ。それに、目印なんて残して逃げる気あるのかな? まあ、いっか。逃げる子を追いかけるのも楽しそうだ」


 レノンには、外見が醜くなる呪いをかけている。それに、最近新たに人避けの呪いもかけた。彼女は影の薄い存在になっているはず。彼女に容易に近づけるものはいないだろう。

 もし彼女を認識できる者がいるとすれば、僕と同じ存在だ。魔女なんて稀少な存在には、なかなか会えない。


 人間世界にいる魔女なんて珍種以外のなにものでもない。ほとんどが人間から姿を隠し、ある場所に集まって暮らしている。そんな中で、人間に溶け込むように暮らしているのだから。たまに、人間のいる街にふらっと足を運ぶ者もいるが、本当に稀なことだ。


 魔女の姿形は人間と変わらない。それに、おとぎ話化しているので、魔女に気づくような人間もいないと思う。しかし、魔女たちには隠れ住む理由がある。昔々に人間が同胞をたくさん殺したかららしい。

 過去から現在まで、同胞を守るために、魔女たちは共同生活を営んでいる。多くの魔女たちと住むのが嫌なものは出て行ったが、それ以外はある場所に留まっていた。


 彼女が魔女に絡まれているなんてことないとは思う。そう信じたい。自分より弱い魔女なら対応することができる。だが、自分より強い魔女となると対応できるか怪しい。黒魔女と呼ばれるものは、僕一人では対応できない。どうか魔女に捕まってることがないように願おう。そう願っていたのに、まさか、あの人に捕まっているとは思わなかった。


 ほかの魔女よりは断然マシだけど、あの人の相手も面倒だ。できるなら、相手をしたくはなかった。なぜ、あの人のもとへ行くことになったのか。あの人からの手紙を眺め、彼女があの人と知り合ったことに頭を抱えた。しかし、彼女が見つかったことの方が重要なことであった。

 僕はあの人からの手紙を受け取った時の衝撃は忘れられない。


***


 街へ行った。

 彼女には魔女の呪いをかけてある。彼女に虫がつかないようにするためだ。彼女に近づく人間は全員悪い虫だ。虫がいたら、駆逐しなければならない。しかし、街中を全て探しても対象の彼女が街にはいなかった。

 僕が彼女に気づかれないように行動範囲を制限している。そのため、彼女の行動範囲は狭い。彼女がいないはずがない。そう思うも、答えは出てこなかった。


 彼女の居場所は依然とわからないまま。状況は一変するどころか、最悪だ。彼女が見つからないのだから。はぁ、とため息が漏れてしまう。

 僕が探していた場所から近い隣街も当たってみた。そこにも彼女はいなかった。魔女の力を使うのも疲れるのに、彼女がいないだけで気分が沈む。


「君はどこに行ったのかな?」


 ポツリと出てきた言葉。空を眺めて、落ちた気分を吹き飛ばそうとした。空には黒い鳥が飛んでいた。まるで、今の僕の心を表しているようだ。僕はボーッと突っ立っていた。


――一匹の黒い烏が僕にぶつかってくる。


 視界に入った黒を避けようと体を動かしたが、間に合わない。僕と烏は衝突した。どこを飛んでいるんだ、この烏。燃やしてやろうかと思った僕は悪くない。


 目を回している烏を見ると、足には紙が結ばれていた。僕はその紙を烏の足から解いて、取った。そこには、お母様の下にレノンがいるということが書かれていた。僕は、唯一の手がかりといえるものに飛びついた。倒れている烏を乱暴に掴む。「グエッ」と呻いたが、気にする余裕はない。


 僕の出来る限りの力を使い、最速でお母様の家に向かう。そこには、レノンがいた。僕は彼女の無事を喜びながらも、早く連れて帰りたくてたまらなかった。


 お母様会って、使い魔が傷ついたことで怒られたが、そんなことはどうでもよかった。レノンに会えたのだから。僕は、束の間の喜びに浸っていた。――彼女に拒否されるまで。

Copyright(C)2019-莱兎

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