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困った。鍋の中を見ておくように言われたが、どうすればいいのだろうか。火は、鍋の底全体に炎がよくあたっている状態だった。強火で煮ているため、火加減が心配になる。しかし、アイリスちゃんがつけていったものなので、火加減に問題はないと思われる。……多分。
煮ているガラス瓶を眺めていると、アイリスちゃんが戻ってきた。清潔な布を取ってくるだけだったので、それほど時間はかからなかったのだろう。
「レノンちゃん、鍋の中身はどうかしら?」
聞こえてきた声の方を振り返る。そこには、白い布を持ったアイリスちゃんがいた。彼女は私の隣へ歩いてきた。
「まだ沸騰はしてません。時間かかりそうですね」
「水は一、二分で沸騰したりしないもの。ふふふ、薬ももうすぐ冷えて完成するし、短縮した方がいいわね」
「短縮?」
「レノンちゃん、この布持っておいて」
アイリスちゃんが持っている布をポンっと渡された。落としそうになったが、慌てて受け取る。
「これ、瓶を乾かすために敷いておくものでは?」
「うん、空いてる場所に広げておいて。私はすぐに煮沸消毒を終わらせちゃうから!」
「終わらせるってそんなことできるわけがないと思います」
「レノンちゃん、私は偉大な魔女なのよ。時間を操るくらい……うん、まぁ、できるわ。(世界の時間を動かすわけではないし、大丈夫なはずよ。今回は水を沸騰させ、瓶の時間をちょこっと動かすだけだし、平気よ……多分)」
釈然としない返事。急に黙り込んでしまったアイリスちゃん。短縮することに何か良くないことでもあるのだろうか。
私がアイリスちゃんの様子を伺っていると――。
「大丈夫よ! そんな不安そうな顔しないで」
彼女は微笑み、私の頭を撫でた。私はそんな彼女に安心して、自分の作業を進めることができた。
その後、何事もなく煮沸消毒は終わった。また、アイリスちゃんのおかげで、短時間で瓶が乾いた。
冷えた紫色の薬をアイリスちゃんと共にガラス瓶に移す。私はできた薬に満足した。
椅子に座りながら、薬を眺める私。椅子に座ったアイリスちゃんはそんな私を見ていた。私にとって、特別なものを見て喜んでいたのをぶち壊したのは――。
「レノン、やっと会えましたね。無事なようで良かったです。お母様に会っているとは思いませんでしたが、……まあ、お母様が保護してくださっていて喜ぶべきでしょうか?」
「そうよ。私がレノンちゃんを連れてこなかったら、あなたは今頃いろんな街を探し回っていたと思うわ」
「レノンの行動範囲はそこまで広くないので、そんなことにはならないと思います。ですが、助かりました。お母様、連絡ありがとうございます。……さあ、レノン。今すぐに僕と一緒に帰りましょう?」
突然現れたアディクであった。彼はなぜ、ここにいるのか。アイリスちゃんが連絡した? 一緒に帰る? 絶対、嫌。帰りたくない。
だいたい、寝れる薬を作れたことに舞い上がっている時に来るなんて、タイミング悪いのよ。
私はアディクを睨みつけた。
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