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11-1

 紫色の液体が透明な瓶に注がれていく。私はこれで多少は寝ることができるだろう。手伝いで作った薬。ほとんどアイリスちゃんが作ったものだが、自分の力も使った。そのため、特別なものに見えてくる。


「はあ、お疲れ様。レノンちゃん」

「はい、お疲れ様です」


 椅子に座ってできた薬を眺める私。アイリスちゃんはそんな私を見つめていた。


***


 グツグツと煮立った薬を容器に移し、氷水で冷やすことを何度も繰り返した。大量の氷も大量の水もアイリスちゃんが用意していた。


「レノンちゃん、薬をガラス瓶に入れるのは最後よ。熱湯を入れたら、割れちゃうわ」

「そうなんですか? じゃあ、何に入れれば……」

「この小さなボウルに入れてちょうだい」


 アイリスちゃんが渡したのは、丸みのある銀色のボウルというもの。もう一つの大きな銀色のボウルは何に使うのだろうか。

 私は気になってジーッと大きなボウルを見ていた。


「ふふ、レノンちゃんが見ているものには、氷水を入れるのよ。レノンちゃんが渡したものに薬を入れて、それを氷水で冷やすの。その作業の繰り返しよ」

「そうなんですね! じゃあ、これに薬を入れていきます!」


 いくつも用意された小さなボウルに、鍋からすくった液体を入れていった。持っている容器から熱さが伝わってきて、「あつっ!」と口から溢れてしまう。


「出来立てで熱いから、火傷しないように気をつけて」

「はい、わかりました」


 慎重に薬をボウルに入れていく私。アイリスちゃんは薬が入ったボウルを氷水に浮かべていた。


「よし、こんなものね。レノンちゃん、大きい鍋を用意しておいてもらえる?」

「えっと、探しておきます」

「ふふ、わかりやすいところにあるから、探すのは楽だと思うわ。あと、鍋には水をたっぷりお願いね」


 鍋が空になり、薬を移した容器を氷水に浮かべ終わった頃。机上には、銀色で埋まっていた。このまま、薬が冷えるのを待つらしい。

 私は、アイリスちゃんに頼まれた鍋を探そう。見つけたら、洗って、水を準備しておこう。彼女の言う通り、すぐに見つかった。収納棚を開くと、鍋があったから。

 簡単に鍋を洗っておく。そして、鍋に水を入れた。


「あら、レノンちゃん。準備が終わるの早いわね」

「アイリスちゃん、その腕にいっぱい抱えてるものは何に……」


 アイリスちゃんは透明な瓶を大量に持っていた。多くの割れ物を抱えていて大丈夫だろうか。落としてしまわないか、オロオロしてしまう。


「冷やした薬を入れるのに使うの。煮沸消毒をするのに、鍋と水を用意してと頼んだのよ。レノンちゃん、ありがとうね」

「アイリスちゃん、煮沸消毒とは?」

「ふふふ、ちゃんと教えてあげる。その前に、このガラス瓶を置きたいわ」


 アイリスちゃんに言われて、「あっ!」と気づいた私。置ける場所を塞いでいたので、サッと退いた。

 私は彼女の抱えているガラス瓶を一つ一つとって、静かにシンクに置いていく。衝撃を与えないように、割れないように、気をつけて……。


「ふぅ、疲れたわね。ありがとう、レノンちゃん。もうひと頑張りよ。では、煮沸消毒をします。まずは――」


 アイリスちゃんによる煮沸消毒についての説明が始まった。


 煮沸消毒とは、鍋に水と容器を入れて、煮ることで、菌を殺し、消毒する方法である。

 殺菌効果があるので、薬を保存する容器には、煮沸消毒をしておくらしい。しかし、ガラス瓶のほとんどは煮沸消毒できない。そのため、耐熱性のガラス瓶を使用しているようだ。

 煮沸消毒の方法は簡単。一に、煮沸消毒する対象物を洗う。二に、鍋に入った水と一緒に対象物も煮る。三に、箸やトングなどで対象物を取り、清潔な布、布巾の上に逆さに置いて乾かす。

 注意することもあるが、だいたいこんな感じの説明だった。


「清潔な布を用意するのを忘れてたわ。あと、煮る時間は沸騰させてから五分間よ。レノンちゃんは、鍋の中を見ていてちょうだい。私は清潔な布を取ってくるわ」

「えっ、ま、待ってください!!」


 走っていくアイリスちゃんを追いかけたかった。だが、私は見ているように頼まれたので、その場に残った。

Copyright(C)2019-莱兎

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