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10-1

 お姫様が着るような煌びやかなドレスは着ていない。ある人は、黒い服を身につけていた。肌全体が隠れるような服を着ている女性であるが、チラッと見える白い肌に目を奪われる。袖から出てくる手も白くて、綺麗だった。


 こげ茶色の髪をした女性は、微笑を浮かべている。ひとつひとつの動作が美しく、それに引き込まれてしまった。唇に手を添える動作までも目を離すことはできない。普通の人間なら……。ある女は違った。


 儚さが際立つ人だった。華奢な子だった。どことなく影があり、守ってあげたくなるような女だった。青白い顔をしているが、見苦しくはない。よく見ると、その人の目の下には隈があった。それに醜さを感じることはないと思われる。女の憂いを帯びている表情が足されて、思わず声をかけたくなるような人だった。

 その子は、目を軽くこすっている。


「うぅぅぅ〜、アイリスちゃん。眠ぃれす」

「うふふふふ、レノンちゃんは、息子の呪いのせいで眠れないのね」


 夢の世界へ旅立ちそうな少女は、机に肘をついていた。彼女は、美女の笑みを正面から受け止めても、目をしょぼしょぼさせているだけ。落ちてくる瞼に彼女は抗ってはいる。寝てしまいそうなものだが……。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 寝れないよ〜!!」


 突然発狂しだしたかと思うと、机に突っ伏してブツブツと呟き始める。


「ねたいねたいねたいねたいねたいねたいねたいねたいねたいねたいねたいねたいねたいねたいねたいっ! アディクのばか〜〜っ!!」


 自らの欲求を狂ったように何度も言う女。これに恐怖を感じないものはいるだろうか。彼女はある男への罵倒も忘れことなく、大声で叫んでいた。


「うふふふふふふ、私にその呪いをどうにかすることはできないわ。でも、レノンちゃん。寝れる薬なら作ってあげられるわ。強力なものでいいなら……ね」

「ぜひ、お願いします!!」


 彼女は速攻で美女の手を握った。


***


 レノンちゃんは、とても面白い子。まったく、息子はこんな可愛い子を放っておいてなにをしているのかしら。ジュリーという頭悪そうな女で遊んでないで、早くレノンちゃんに会いにきなさいよね。


 あっ! レノンちゃんの居場所を知らせてないわ。私のペットに紙を結びつけて、息子の下へ使いをやるべきなの? どうしようかしら。まだ、レノンちゃんと一緒にいたい。独り占めしたいわ。これは、悩むわね。


 あとから文句言われるのも面倒だから、一応使いは送っておきましょう。遠回りするように伝えれば、時間は稼げるわ。さてさて、動きますか! レノンちゃんのことを雇ってあげないとならないものね。主に私とのおしゃべりが彼女の仕事になりそうだわ。

Copyright(C)2019-莱兎

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