9-3
ビクビク怯えている女。ずっとそのまま静かにいてくれればいいのに。
聞きたいことはしっかり聞いてくる。また、頼みごともしてくる。自分の現状を理解しているのだろうか。
「あはははははははっ、ドロドロしていて気持ち悪いだろうけど、そろそろ君を薬の中に入れるよ?」
「えっ!? まって!! 次に会うのはいつになるの?」
「さぁ? そんなには待たないと思うよ?」
「でも、会えない日が続くのでしょう? わたくし、あなたの顔を見ておきたいわ。だから、目隠しをとってちょうだい」
「それは無理だよ。ああ、もう時間だ」
なんだか面倒臭くなってきた。彼女で遊ぶのもここで終わりだ。僕は、彼女の要望を拒否して、彼女を棺まで運んだ。そして、棺の中に入れる。目覚めた彼女は誰のものになっているのだろうか。それは、僕にもわからない。彼女の主人にどのような性格が選ばれているのかは、その時の僕の気分次第だ。
「ぁ、ぁ、ぁでぃ、く」
「なあに?」
「わた、くし、あなた……ために……きれいに、なる……わ。だから、アイシテ……」
優しく問いかけてあげた。僕のせめてもの温情だ。これで君と話すのは最後になるだろうからね。
君なんてどうでもいいし、僕が君を愛する未来なんてものは一切ない。これから先、一生君を愛することなんてないよ。それに、君が僕のために綺麗になることを僕は望んでいない。君は他の誰かのために綺麗になることが僕の願いだ。
君の想いは僕にとって必要のないもの。君が僕の役に立ってくれれば、それで十分だ。
「聞こえてるだろうか? はははははっ、君はバカだな。僕はジュリーがいつまでも綺麗であれるように、薬に漬けることにした。やっと、邪魔な君がいなくなると思うとせいせいするよ。よかったね。君は目覚めたら、幸せになっているだろう。……君を愛している者の手によって――ね」
僕は地下室を後にした。
しばらく地下は封鎖しておかないと、ね。僕の家で他の者が悪さすることはないだろうし、地下を見つけることもないだろう。だが、一応誰も入らないように対策して、用心しておこうと思う。
ちょうどいいタイミングだ。レノンを探すために出かけるから、戸締りも必要になってくる。手間はかかるが、地下室への道を見えないようにして、誰の目にもつかないようにしよう。また、愛する彼女を連れ戻したときにバレてしまったら、弱ってしまう。僕は彼女へ上手く誤魔化せる自信はない。念には念を入れて隠さねば……。
僕は今とても気分がいい。この先、一人の煩わしい女を相手にすることがなくなったのだから。
さてさて、今度こそレノンが逃げ出さないようにしておかないと……。彼女をどうやって囲い込もうか。どこまで行ってしまったのかわからないが、必ず見つけ出す。
「レノン、僕のことを待ってて」
捕らえた彼女を想像して、僕はほくそ笑んだ。
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