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君を薬漬けにしないといけない。逃げられても困る。だから、このまま勘違いしたままでいてくれると、ありがたい。楽に事が運べるからな。
「じゃあ、なんでそんなことを聞くのよ!!」
「ふふふ、僕への愛が本当なら今から僕が君にすることも許してくれるよね? その君の広い心で、僕への深い愛情で……」
「そんなの当たり前よ!! わたくしはあのバカ女とは違うのよ!? あなたを愛するわたくしはあなたのためならなんでもできるわ」
ふ〜ん。よく言うよ。邪魔な君は僕の言うことを聞かなかったくせに。愛する僕のためなら、なんでもできるなんて嘘じゃないか。でも、その君の言葉が本物か試そう。僕のために役立ってくれると言うんだから、その心意気は買おうか。君が僕に愛される未来は訪れることはないだろうけど、……僕のためならなんでもできるらしいからね。
「じゃあ、君はこれからこの寒い部屋の中で一人だ」
「はぁ!? なに、言ってるの? わたくしをこんな冷たい場所で一人にするなんて、酷いわ!!」
「でも、君は僕のためならなんでもするんでしょ? これは、僕の望んでいることだ。君にはそれができないの? 君は僕に嘘をついたの? もしそうなら残念だよ」
君が嘘を吐こうが、拒否しようが、僕は君をこの地下に置いていく。それは変わることのない事実だ。君はどれくらい僕のために頑張ることができる? どれくらい僕の提案を飲める?
「ち、ち、違うわ、アディク。嘘なんかじゃない。わたくしは、嘘なんてついてないわ! あなたのためならなんでもできるもの!!」
「じゃあ、僕の言うことを聞けるよね?」
「ええ、わたくしはこの冷たいところで、一人で、あなたを待つのね?」
「(違うけど、まあいいか。)そうだよ。あと、僕は今から君を薬に漬ける。待つことに加えて、君はそれを我慢することになる。できるよね?」
「くす……り? (これを断ったら彼に捨てられてしまうかもしれない。わたくしは彼のためなら、なんでもできるの。それを証明するの!) わかった、我慢するわ」
やせ我慢をしている彼女。手を握り締めて、耐えているようだ。彼女は真っ先に僕の意見に反対しそうなのに、頑張ってるみたい。いつもの彼女だったら、嫌なことは受け入れずに、騒ぎ出していただろう。
ああ、面白い。僕の言葉でこんなにも彼女の行いが変わるものだとは思わなかった。できれば、口をひき結ぶことも手を強く握り締めることもやめてほしい。唇を噛んでしまい、血が出たら困る。それに、手が傷ついてしまうことも本意ではない。
それらの行いは、君を良い状態で保存したいと思う僕の望まないことだ。僕の意図を読めない彼女には助かっているとはいえ、イラッとしてしまう。
「ジュリー、そんなに強く手を握るな。傷がつく」
「アディク! ご、ごめんなさい……」
「なぜ、そんなにビクビクしながら謝る? 僕は怒っていない。急にどうしたんだ?」
「怒ってないの? なんだか、今のあなたは怖いわ。ピリピリしているように感じるの。辺りの空気がチクチクしているようで、針に刺されているみたいに痛いのよ」
へぇ〜。この不機嫌さを前面に出してれば、この女は静かでいるのか。今更わかったところで、もうこの女に使うことはないだろう。もう少し早くにわかっていれば、この女の対処も楽だったろうに、口惜しいことだ。
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