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どうしてこうなってしまったの。わたくしは、アディクに愛されるはずだった。彼に愛されて誰よりも幸せになるはずだったの。それなのに、わたくしは冷たい液体の中で一人。寂しいわ。
目隠しを取るように頼んだけれど、彼は取ってはくれなかった。わたくしの暗示は効いていたのに。わたくしくを一目見ただけで惚れてしまう薬を無理矢理飲ませるべきだったわ。
動かない体に、だるさを感じる。瞼も重くなってきた。わたくしは、彼に愛されるべき人間よ。だって、彼は言ってくれたもの。
「――。ジュリーがいつまでも綺麗にあれるように、薬に漬けることにした。――、よかったね。君は目覚めたら、幸せになっているだろう。……君を愛している者の手によって――ね」
ところどころ聞こえなかったが、彼はわたくしのことを考えてくれている。それがわかり、とても嬉しかった。
わたくしを愛してくれている彼によって、幸せになっている。その未来を想像するだけで、一人でいることにも耐えられそうよ。この冷たいドロドロとした気持ち悪い液体の中でも、彼の望むことなら、わたくしは我慢できるわ。
彼は、わたくしを選んでくれた。あのブス女ではなく、わたくしを選んでくれているの。だから、不安に支配されず、彼を待つことができそうよ。少しの間、彼といられないのは悲しい。彼がわたくしの思い通りに行動しなかったことも悔しいわ。でも、どんな彼の行いも許せるの。今起こっている全てがわたくしのことを考えているものだと思っているから。
わたくしは優しい女だわ。ねぇ、アディク。わたくしはいつまでも待っているから、早く迎えにきてね。あなたにふさわしい綺麗な女でいられるように頑張るから。愛しているわ。おやすみなさい。
***
棺に薬を準備した部屋についた。担いでいたジュリーを丁寧に地面に下ろす。「冷たい」と叫ぶ彼女の声は無視だ。その美貌を保つために傷つけないようにはしよう。だが、他のことで僕がお前を気遣うなんて思うなよ。顔や体に傷がついたら、価値が下がってしまうから丁重に扱うだけだ。
さて、僕の名前を連呼する彼女をゆっくり棺に下ろしてやろうか。棺の中に放り込んでしまえば、しばらく手を煩わせなくて済む。しかし、それでは面白くない。
「ねぇ、ジュリー。僕のことが好き? 僕のことを愛している?」
「アディク。わたくしは何度もあなたが好きだと、愛していると言ったわ。疑っていたの?」
「ああ、疑ってはいないよ。(どうでもいいのに、なんで疑う必要がある?)」
僕は君を愛してなどいない。僕にはレノンだけだ。君はいつになったら、そのことに気づくのだろうか。
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