7-2
感情が豊かな女性だと思った。ほころんだ顔にこちらも癒されてしまった。
「あの〜、息子さんって誰のことですか?」
「うん? さっきいったわよね? アディクは私の息子なのよ」
アディクの母親。アイリスちゃんは、全然老いているようには見えなかった。子供を生んでいる人にしては、若く見える。実際、何歳で彼を生んだのだろうか。現在、二十代前半と言われても、信じてしまいそうだ。
アイリスちゃんは誰もかもを魅了してしまうような美しさを持っている人。こんな美人がいるなら、秘密にせずに教えてくれても良かったのに。私に紹介したら、何か不都合でもあったのだろうか。
「美人なんて褒めたって、何も出てこないわよ。あっ、はい紅茶でもどうぞ。さっ、いつまでも立ってないで、座って座って」
「あ、ありがとうございます」
何もてないなんてことはなかった。香りのいい紅茶が出てきた。何もないところから出てきたので、どういう仕組みなのか、不思議に思った。
椅子に座るようにも誘導され、至れり尽くせりだ。ずっと立ちっぱなしで話を聞いているのも辛いから、座れたことに安堵した。
「ねぇ、レノンちゃん。不都合ならあるの。息子が私を紹介しなかったのはね、私にレノンちゃんを取られたくなかったのよ。あと、ばれたくなかったからね」
「私をとられたくなかった? 私にばれたくなかった?」
「ふふふふふ、そうなのよ。私と息子は親子だからかしら。似ているところがあるの。気に入る子はだいたい同じだし、興味のない子にはほとほと冷たいわ。私がレノンちゃんを一目見たら、気に入っちゃうってわかってたんだと思うわ。だから、あなたに紹介しなかったのよ」
それがあいつにとっての不都合なのだろうか。では、ばれたくないとはどういうことか。そもそもアディクは私にばれたくないことがあるのか。
「アディクはどうかとして、アイリスちゃんが誰かに冷たくするなんてことは考えられません」
「これでも、結構長生きしてるからね。隠すのも上手になったのよ」
長生きしているといわれると、何歳か気になってくる。聞いたら、怖そうだから黙っておこう。
私を気にいるなんて二人とも感性がおかしいと思う。私のどこにその要素があるのだろうか。性格も悪いわけでもなく、良いわけでもない。容姿は人から見たら、顔を顰められてしまうくらい酷いだろう。その私が人に気に入られるなんて変な話だ。
「ふふふふっ、レノンちゃんはなーんにも教えられてないのね。眠れてないから、隈はあるものの、そんなに酷い容姿ではないわ。弱々しいけど、美しく儚い。陰があって、守ってあげたくなるような女の子ね」
ニンマリと笑っている彼女は、私で遊んでいるのではないだろうか。
Copyright(C)2019-莱兎




