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6-3

 そういう話は他所でやれ。アディク、ジュリーという女にわざわざ対抗するようなことを言わなくていい。


「僕は、レノンに飼い殺されるのは嬉しいと思いますが、あなたに飼われるのはごめんですね。他を当たってください」

「うるせー。私はお前を愛しているんだ。だから、お前じゃないとダメなんだよ。なぁ、アディク〜。魔女である私たちは魔女同士で結ばれるのが幸せだろう? そんなみすぼらしくて、見るに耐えないバカな女はさっさと捨てた方がいい」


 胸をえぐれた。ハッキリ言われた方がいいとは思っていたが、実際に言われるとダメージが大きい。しかも、美人。口悪いけど、美人。おっかなくて、性格に問題がありまくりだけど美人。綺麗な人の攻撃は、精神的に効いた。

 ただ、私も黙ったままではなかった。内心で、ちょっと抵抗した。その口の悪さを終始隠せれば、モテるだろうに、と思っていた。


 心が落ち着いてくると、おかしなことに何かが引っかかった。私は「あれ? 」とその何かについつい首を傾げる。女の強烈な印象に逃してしまうところだった。女が魔女と言っていたこと、魔女同士とも言っていたことを……。その発言を疑問に思わず、スルーしてしまうところだった。女も魔女で、アディクも魔女だと言うことを流してしまうところだった。


 やっと掴めた魔女の情報。流すわけにはいかない。私にとって魔女は探し人だ。嫌なやつで、嫌な縁だが、探しているものだ。私の探している魔女がわかるかもしれないと意気込んでいたその時。ふと、アディクに対して、なんとなく既視感を感じた。私の探してる魔女が彼なんてことはないはず。彼は違う人であるはずだ。近くにいる彼が私の探している魔女であるはずがないんだ。もしそうだったら、いままでの眠れないという悩みや苦労は一体なんだったのかと思ってしまう。


「魔女同士が結ばれると相性がいいことは確かです。しかし、運命に勝るものはありませんよ。僕への執着はさっさとなくして、早々にご自身の運命を見つけてはいかがですか?」


 唐突に押し寄せた情報を整理できない。イライラが募った。一方で、私を放置して進む話に、心がすーっと冷えていく。

 『運命』がなにかはわからないが、その者と結ばれることを表現していると思われる。恋人関係になる、婚約する、結婚する、などがそれに当てはまるだろう。

 私がアディクと恋人になる? ありえない。結婚なんてもってのほかだ。冗談じゃない。ふつふつと怒りが湧いてきた。


「私はアディクがいいんだ! 私の運命はアディクだ! 逃げるなんて許さない!! そこの女がお前の運命なら、殺してしまえばいい。私のアディクが他に心を寄せるものがいるなら、そうすればすんなり解決する」

「冗談じゃありませんよ! レノンを殺すなんてことは僕が許しません。そんなことをすると言うなら、その前に僕があなたを人食い狼の餌にします」

「だったら、私はお前に……」


 アディクの腕から逃れようと暴れた。身をよじったり、手足を動かしたりした。だが、すんなり逃れることはできなかった。突然の私の行動に対応してきた彼は、私を抱く腕に力を込めた。強い力だった。「いたいっ!」と私が声をあげなかったら、彼は腕を離さなかっただろう。彼は私を傷つけないように配慮したのだと思う。

 彼の腕からなんとか抜け出せた私。彼は私が何をしようとしたのかわかったのだろう。とっさに手を伸ばして、再び私を捕まえようとした。私はその手から逃れ、彼らからも離れて、扉の前へ走って移動する。

 もう、我慢できない。薬なんて知ったことか。扉を開け、ピタッと動きを止めた。私は後ろを振り返る。


「物騒な会話中申し訳ありませんが、私は関係ないので、この辺で失礼いたします」

「関係ないわけないだろ? あんたはアディクの運命だ!」

「運命? そんな話聞いたことありません。その男があなたから逃れるための嘘でしょうね。それに! 私はその男の恋人になって結婚するなんて真っ平ですから、これ以上私を巻き込まないでください」

「まってください! レノン!!」


 慌てているアディクの声なんて無視だ。私は走って玄関に向かった。その扉を開けて、外へ出る。彼は私の中で信用できない人間に変わった。歪な始まりで、今まで彼の優しさに甘えてきたが、もう終わりにする。

 魔女が彼だったと考えて、彼が私のことを知っていたとしよう。彼は正体に気づいていない私のことを嘲笑っていたに違いない。私が眠れる薬を作ってくれてはいた。だが、そこにはなんらかの思惑があったから彼は動いていたにすぎない。私は彼の行いにまんまと騙されていたのだ。


「あいつの思い通りになってたまるか! こうなったら、魔女だってことを告げず、ずっと知らんぷりし続けやる!!」


 とりあえず、勤め先を探そう。

Copyright(C)2019-莱兎

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