6-2
ジュリーと呼ばれていた女の態度は変わらない。歪められた唇。つりがった目。おっかない顔をして睨む姿。なによりも、剣幕がすごかった。
「こんな子がアデイグの運命なわけないじゃない! わたくしはあなたにふさわしい女性であれるように頑張ってきたのよ。美容にも気をつけているわ。なのに! こんな子が……こんな子にあなたの運命を譲らなければならないの!? わたくしはあなたの運命を認めないし、諦めませんからね!!」
運命が何を指しているのかはよくわからない。だが、私が貶されてることはわかる。私のことが醜いとか貧相とか言いたいのだと思う。それとなくほのめかしているのが、ムカつくよね。はっきり言えばいいのに。私だって、容姿や体型が目の前にいる人に敵うとは思っていない。
眠れていたら、なんてもしのことを考えるのはやめよう。余計に虚しくなる。
「僕の運命はレノンですよ。あなたが運命なんてことはありえません。あなたは、勘違いをしているだけです。僕たちはちゃんとお互いに認めあって、支え合って、生きているので邪魔しないでください。ですよね? レノン??」
黒い笑顔を向けてくるやつ。暗に頷けって言ってくるのやめて。私は何もわかっていない。それなのに、あいつの意に沿わないといけないのが腹が立つ。
私は内心ムッとしていた。それを面に出さないように、勢いよく頷いた。チラッと女を見てみると、苛立っている。爪を噛んでおり、血走った目がこちらを射抜いていた。
今にも人を殺せそうな顔をしている女。脱兎のごとく、逃げたい。誰か、助けて。切実な願いは誰にも通じない。助けてくれるものもいない。頼りになるアディクは……。
「あなたは、顔はいいし、体つきもいいから、多くの男に好かれそうなものです。しかし、その自分本位な性格が問題ですね。たまにヒステリックに叫ぶあなたに、幾度となく我慢したことは覚えています。僕が他の子に近づくとすぐにあなたは僕の行動を制限しようとしました。それをきかなかったら、喚き散らして、とても迷惑でしたよ。すぐにその性格を改善することをお勧めします。あと……」
事を荒立てるようなことを言っていた。殴りたい。もう少し穏便に済ます気はないのだろうか。胃がキリキリしてきた。私に抱きついて、相手を煽るようなこともしている。これ、道端でばったり会ったら、刺されそう。私の命は誰かさんのせいで、危険に晒されてしまった。
考えなしのバカアディク。殺されたらどうしてくれるのよ。修羅のような表情をしているだろう女を見るのも怖いわ。そう思ったが、怖いものみたさで、そろっと女の様子を伺ってみる。サッと彼を盾にした。どんな表情をしていたか、言うのも恐ろしい。妙な好奇心はよくないね。女って怖い。彼がいない一人の状態だったら、ガクブル震えていただろう。
「口が悪いのをなんとかするといいと思います」
「うっさいんだよ! お前だって、口は悪いじゃないか! 隠しているお前に言われる筋合いはないんだよ! この女泣かせ。クズ男。私の言うことを聞かないお前は、状態を維持させる薬漬けにしてやる!! そうしたら、私のことを貶すその口は閉じられるし、一生飼い殺せる」
なにも聞かなかったことにしていいかな? できたら、失神してしまいたい。私、こんな狂気じみた女を相手にするのは嫌だからね。絶対無理。しばらく、家に引きこもってよう。
Copyright(C)2019-莱兎




