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5-2

 私は彼を落ち着かせようと、名前を呼んだ。うっとおしいと思っているが、それを悟られないように優しく声をかける。


「ねぇ……アディク」

「レノン! 僕は真面目に聞いてるんです。答えてください!!」


 彼に対して効果はなかったようだ。彼はとうとう行動を移してきた。我慢できなくなったのか、私の手を握ってくる。暑苦しい。どこかに逃げるわけでもないんだから、ギュッと握ってこないでよ。手がミシミシいってて、痛い。アディクの握力によって手が潰される。


「痛いから! さっさと手を離して!!」

「嫌です! 僕が大事というまで手は話しません」


 こちらが会話の主導権を握ろうとしたものの、痛みでさっそくペースを崩された。また、私にとって彼の言葉は物騒であった。背筋がひやりとする。アディクの手を離そうと、さりげなく手を引こうとしたが、彼はより強く手を握ってくる。離れない。離すこともできない。こいつ、蹴り飛ばしていいだろうか。


「アディク?」

「レノン! 僕はあなたが好きなんです。あなたに捨てられたら、生きていけません。だから、僕のことを誰よりも何よりも大事といってください。レノンが僕のものであるように、僕もレノンのものですから! さあ、早く!!」


 冷めた声で名前を呼んだが、彼は堪えていなかった。キラキラとした目でこちらを見てくる。どさくさに紛れて、告白っぽいことされてたように思うが、何も聞いてないことにしよう。こういうとき、曖昧にして逃げるのも大事だ。私にとって彼の気持ちは迷惑なもの。応えられない。逃げるが勝ちよ。


「誰がいつあなたのものになったの? そんな冗談いってもムカつくだけよ。ねぇ、そろそろ手を離してくれない? 痛いっていってんのよ!!」


 空いてる手でアディクの頰を打った。彼は目を見開いていた。私は力が緩んだ隙にスッと手を引く。両手を掴まれないようにさっと布団の中に入れた。

 彼の動向を探るため、目を逸らさないようにジッと見つめた。私のその様子に、彼は愛想笑いを浮かべている。それを見た私。彼から逃げたい気持ちが強くなった。


「レノンは酷い人間ですね。僕は、僕は……。レノン、僕は決めました。大丈夫です。何にも怖いことはありません。これから僕のすることを否定さえしなければ、君の生活を保証しよう」


 鋭い目つきで、私を睨んできた。目の奥が笑っていなかった。彼の豹変が信じられない。低い声。不気味な笑み。仄暗い瞳。私の頰を包んだ冷たい手。こんな恐ろしい彼は、初めて見た。


Copyright(C)2019-莱兎

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