コズミック・ラビリンス(ストアページ)
タイトル:コズミック・ラビリンス
メーカー:スターリィ・ウィズダム・エンターテインメント
ジャンル:VR脳力開発型ホラーRPG
レーディング:R15、暴力表現あり、残酷表現あり、恐怖演出あり、流血描写あり、その他ショッキングな演出を含む(詳細は“こちら”をタップ)
価格:三千円(サービス期間中につき50%OFF!)
評価:☆☆☆ (五段階評価)
レビュー:13件
PR:このゲームは、現在のもの足りないVR表現に満足できず、日々、脳力の鍛練に励む求道者。あるいは今までとは異なるVRゲームとの出会いを求めて、数多のゲーム配信サイトを渡り歩いてきた巡礼者。または、全く未知の体験や刺激を欲する探索者……。そんな選ばれし皆様の為に製作された、画期的なVR空間適応脳力開発型のホラーRPGです。
これまでのゲームに有りがちな、あらかじめ決められたパラメータやスキル群、あるいは特別感を演出する為のユニークジョブに、ユニーク種族……そう言った要素に頼らない、正に貴方自身が持つ知性と、五感の全て……すなわち、貴方に秘められた脳力の全てをを駆使しないと、このゲームのクリアは不可能であると断言します。
……そうした独特のゲームシステムは、従来のVRゲームに慣れたユーザーにとっては、不条理に感じるかもしれません。ですが、これこそが我々の目指したVR脳力開発型ゲームの、理想的なスタイルであり、また我々の考えるVRゲームに置ける、面白さの根源を追求した結果である事を、どうかご了承下さい。
なお、このゲームが、所謂クトゥルフ神話をベースとしたホラーゲームの形態を取っているのは、真に迫った恐怖と緊迫感から逃れる為に、貴方自身が持てるポテンシャルをフルに使う事こそが、貴方の脳力の迅速な開発には不可欠と考えたからです。……無論、我々の趣味が大きく関わっている事は否定しませんが。
ともあれ、このゲームによる脳力の開発・向上が、貴方にとって、来るべき新たなVRゲーム世界に至る為の“銀の鍵”となるならば、我々にとって、これ以上の喜びはありません。
それでは最高の恐怖と、未知の体験をお楽しみ下さい。
…………
……気になる。
評価は星が三つ。だいたい賛否両論と言った所か。
PR欄は長い割には、ゲームの具体的なストーリーやシステムをほとんど紹介していない。今時の配信ゲームのPRなんて、口説いまでに丁寧な説明でないと、ユーザーに見向きもされないのが常識なのだが、よほど内容に自身が有るのだろうか?
その一方で、読み方によっては挑発的に取れる文面が、俺みたいな“こじらせた”プレイヤーの神経をくすぐってくる。少なくとも、俺にはまるで、“お前にクリア出来るなら、やってみな”……と言った感じの悪意の有るニュアンスを、この慇懃な文脈から感じ取れてしまう。……ひねくれ過ぎかな?
何よりも“VR空間における脳力開発”を謳ったVRゲーム自体が、極めて珍しい。……少なくとも、日本において、脳力開発ゲーム……所謂、脳ゲーとは、非VRタイプのパズルゲームやアドベンチャーゲームが主体で、その目的もボケ防止や知能指数向上を謳ったものばかりだ。なのに、はっきりとVR空間適応を目的とした、脳力開発をセールスポイントに挙げたゲームを、少なくとも俺は始めて見た。
レビュー欄は、英語とスペイン語とロシア語等、お馴染みの言語で埋め尽くされている。日本語は全く無い。しかし、これらの言語でレビューが占められている場合は、明らかに業者による誉め殺しみたいな、称賛一色のレビューで埋め尽くされているモノだが、このゲームに限っては、完全に賛否両論と言った印象を受けた。
曰く、
「何のヒントも無く、ひたすら不条理に死にまくるだけの不親切なクソゲー」
「判る人には解る高度なVRゲーム」
「ロクに動く事すら出来ないゲーム以前の代物」
「とても難しく、慣れない内は動作さえ覚束ないが、脳力開発ゲームとしては当然。むしろ、この独特のVR空間内で自由に動ける様になれば、様々な発見が出来る画期的な“真の神ゲー”である」
……等々、こちらも賛否両論。これでは、評価数とレビューだけで、このゲームの是非を判断するのは難しい。
ならば、後は俺自身の好みに拠る訳だが……その基準に照らして言えば“メッチャ好み”と言わざるを得ない。
何よりも、クトゥルフ神話をベースにしたホラゲーと言うのが嬉しい。二十世紀初頭のアメリカ人作家、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトと、同好の士によって産み出された、一連の魅力的な幻想怪奇小説群は、死後にクトゥルフ神話として世界中に広がり、彼の死後百五十年を経た今でも、様々なメディアにその足跡を残している。
俺自身、中学生の頃に電子書籍の無料コンテンツで、彼の作品群に触れて、その壮大なる宇宙的恐怖に満ちた世界観に魅せられた者の一人だ。きっと、このゲームの制作者も、そうした熱心な“ラヴクラフティアン”に違いない。
メーカー名の、スターリィ・ウィズダム・エンターテインメントは、ラヴクラフトの遺作である“闇に這う者”に登場するカルト教団“星の智慧派”……チャーチ・オブ・スターリィ・ウィズダム……から取られているのは、まず間違いないだろう。
クトゥルフ神話をモチーフにしたり、小説に出てくるモンスターや邪神が登場するゲーム自体は、現代でもRPGを中心に多数あるが、ホラゲーでは逆にベタすぎるのか、見かける事が殆んど無かった。もっとも、この大規制下の時代において、VRホラゲー自体が絶滅危惧種なのだが。
……とにかく、この一見不親切なPRの節々から俺に訴えかけてくる、妙に俺のオタク心をくすぐる要素と、賛否両論のレビュー欄が、俺の心を完全に魅了してしまった。とは言え、本当に良くできたPR詐欺の可能性は捨てきれない。
それに、まだ俺はVR脳力開発について懐疑的な立場を捨ててはいない。しかし、さっきの教授との対談で感じたあの紅茶や血の臭いを、単なる気のせいで単純に切り捨てても良い物だろうか?
……そうだな。一切プレイせずに主観で決めつけてしまうのは、レビュアーの倫理に反する。ここは一つプレイしてみるとしよう。……何と言ってもサービス期間中で半額だし。
俺は、そんな事を考えながら、このゲームのデモ版をダウンロードして、早速ログインしてみた。
「ようこそ」
VRゲーム空間にダイブする瞬間、俺は確かにそう言った男の声を聞いた……気がした。やっぱり気のせいか、それともゲームの演出か……。そんな事を考える間も無く、俺の眼前にこのゲーム……コズミック・ラビリンスの、不気味なデザインのタイトルが飛び込んできた。
さて……