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コズミック・ラビリンス(CHAPTER4:1)

 懐中電灯の光の外は、全くの闇。時々小さな瓦礫が深淵に落ちていく音以外は、全くの静寂。


 俺は結局、この迷宮(ゲーム)に戻ってきた。前回のプレイが僅か数日前だと言うのに、結構昔の出来事の様に思えた。まあ、現実空間(シャバ)でも色々とあったからな。


 そうだ! 色々と言えば! 俺は自分の首からぶら下がってる翡翠の護符を手に取った。護符に刻まれている、翼の生えた魔犬のレリーフ。どう考えてもコイツが鳥小屋の前まで、俺を追いかけた怪物が現れた原因に違いない。


 背後を振り返り、下に灯りを向けた。そこには床は無く、前回のチャプターの終わりに床をブチ抜いて現れた巨大な何かの触手が作り出した、床やその上にいた怪物や……おそらくアルベルトを呑み込んだ巨大な穴が広がっていた。

 穴は広く深く、懐中電灯では底も向こう側も照らし出せず、もう後戻りは出来ないのが一目で解った。


 俺は、この穴の中に忌まわしい護符を投げ捨ててしまいたい衝動に駆られて、おもわず鎖に手をかけた所で、元ネタの小説のオチを思い出して、あわてて手を離した。

 危ない所だった。これはきっと持ってるだけでヤバい呪いのアイテムの類いだろうが、捨てるのももっと不味いはずだ。わざわざ危険を侵して入手するイベントもあったし、只の罠と考えるのはまだ早いだろう。


 ……それに、今の所は奴の気配はしないしな。


気分的に前回のプレイまでに時間が空いたので、自分の装備とアイテムを改める。まず、手には懐中電灯。これもバッテリーの概念があるんだろうか? だったら、そろそろ不安だな。

 腰にはナイフと拳銃のホルスター。拳銃を手に取り、残弾を確かめると残り一発しか無い。差し当たっての問題はこれだな。あとは、首から例の翡翠の護符が下がってて、ポケットには古の印が入ってる。

 バックパックには、チャプター2でこのバックパックに入っていた、中身入りの水筒。未だに使い道は無いが、出番はあるんだろうか?

 それに弾切れの拳銃と、黒いスフィンクスの間で手に入れた石板と、三分の二ほど集まった粘土板で全部か。結構チャプターも進んだのに、思ったよりも少ないモノだ。まあ、あんまりアイテムがゴチャゴチャあっても重くて往生するだけなんだが。


 さて、そろそろ先へ進むか。俺は行く手に灯りを向けた。黒い石組みの通路が見える。他には何もない。ただ、天井が結構狭い。少し身を屈めて歩かないとならないだろう。それに、今までとの最大の違いは、空気がじっとりと湿っている事だ。良く見ると、通路の岩肌も水滴に覆われて黒々と濡れている。

 通路全体に漂う濡れたアスファルトの様な匂いが、こないだの魔犬の襲撃を連想してしまい、軽い恐怖に駆られたが、道は一本しかない。敵や罠に警戒しつつ、足を滑らせない様に慎重に通路を進んだ。


「あ痛っ!」


 俺はまた天井に頭をぶつけてしまい、ゲームの仕様で痛みは無いのに、思わず軽く声に出してしまった。人工物にもかかわらず、けっこう床も天井も歪んでいて、所々でつまずいたり、頭をぶつけている。

 よく見ると、石組みも所々がズレてたり、亀裂が走っている。前回のチャプターの終わりで、あの触手野郎が迷宮の床を崩落させた余波で、ここも崩れてきてる……みたいな感じか?


 ……耳をすますと、時折水滴の音に混ざって、パラパラと小石が落ちる音が聞こえて来る。冗談じゃない! 生き埋めは、俺がしたくない死に方ベストスリーの第二位に入るんだ! ちなみに一位は“溺死”で、三位が“何かに生きたまま喰われる”だ。

 勘弁してくれ。もう三位は落とし仔にやられちまったんだ。まさか、砂漠のド真ん中の地下迷宮で溺死は無いとは思うが、生き埋めは十分に有り得る。VR体験でも、そんな目に逢ったら俺なら本当に死ぬかもしれん。


 泣きそうになりながら通路を進むと、行く手に小さな明かりが見えた。怪しいと言えばそうだが、他に手がかりも無い。弾丸が勿体ないのでナイフを抜いて、慎重に明かりに近づいた。


 そこは広間になっていて、空気も若干乾燥していた。天井も若干高くなっていて、久しぶりに腰を伸ばせた。周囲はの壁には、窪み(アルコーブ)が多数作られていて、その中に巻物(スクロール)が多数保管されている。

 広間の内部には、壁や床と同じ材質の黒い石で出来た机と思われる台が整然と並んでいて、おそらくこの空間が書庫か図書館である事を思わせた。それにしては机の高さが低く、椅子の類いが無いのが気になるが……


 明かりの光源は、広間中央に置いてあったランタンのものであると、すぐに判った。ランタン! チャプター2で入手した物と同じ! すると、先に行ったピルグリム博士はまだ無事だったのか!

 俺は慌ててその机に駆け寄った。ランタンの他には、机の傍らに血で汚れたバックパックが一つ置いてあり、机の上には同じく血で汚れた便箋が数枚と、小さな箱が一つ置いてあった。

 こんなモノを残すのは、ピルグリム博士以外にはいないだろう。小箱やバックパックも気になる所だが、まずは血も乾ききっていない血染めの便箋を手に取った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 砂漠地帯に有る天井のやけに低い地下都市…。(・・; もしかしてここ無名都(書き込みはここで途切れている
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