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コズミック・ラビリンス(CHAPTER2:2)

 他に何か無いか、もう少し探してみると、死体から少し離れた所にバックパックが落ちていた。一見、空に見えたが、拾ってみると結構重い。中に何か入ってるみたいだ。


 床にかがんで懐中電灯の明かりを頼りに、中身を改める。まずは水筒……中身はほぼ満タンだ。何か水が必要な場面があるのかな? それと、鞘に収まった大振りなナイフが一挺。


 これは助かる! やっと攻撃の手段が手に入った。もっとも、普通のファンタジーRPGやゾンビ相手のホラーADVならともかく、クトゥルフ神話ベースの怪物相手に、単なるナイフが役に立つかどうかは甚だ疑問ではあるが……。だが、丸腰では無くなったと言う事実が、俺に僅かだが安心感を与えてくれた。


 後は……まだ奥に何かあるぞ。結構重いな。これは……この硬い金属の感触はまさか……


 取り出してみると、それは手のひらサイズの拳銃だった。いわゆる回転式拳銃……リボルバーってヤツだ。マジか! ナイフに続いて大幅な戦力アップじゃないか! 俺は興奮気味に拳銃を改めた。勿論、俺は実際の拳銃なんて持った事は無い。だが、ある程度リアルなVRFPSなんかで、拳銃の基本的な構造は頭に入っている。

 残弾は……六発全部残ってる。この銃とバックパックの持ち主……そこの惨殺死体さんは、一発も銃を発射する事無く何者かに殺されたのか。まあ、武器を手に持たずにバックパックなんかに入れてりゃ当然か。さて、弾は揃ってるし、銃の機能も問題無さそうだ。最後の問題は……


 俺は取り合えず通路の奥の暗闇に向けて、拳銃を構えて見る。……案の定、FPSみたいに視界の中央に照準用のレティクルが表示されるなんて事は無かった。だよな。このゲームの趣旨を考えてみりゃ、レティクルだの自動照準だのと、そんな甘い機能がある訳が無いもんな。


 ……と、なると少々厄介だぞ。俺はさっきも言った様に本物の銃を扱った事が無いし、どちらかと言えばFPSは苦手な方だ。もし、拳銃が必要な場面になったら、上手く対処出来るだろうか……。まあいい、その時はその時だ。


 バックパックの中身はこれで全部だった。他には何も見つからないし、そろそろ先に進むとしよう。俺は拳銃かナイフかどっちを手に持つか悩んだ末に、拳銃を持つ事にした。

 片手は懐中電灯で塞がってしまうので、どうしても武器は残る片手で持つ事になる。実銃射撃の経験が全く無い俺は、片手で拳銃を的に当てられる自信が全く無かったのだが、この全身に重りをぶら下げたようなトロい動きで、ナイフで戦える自信はもっと無かったので、ひとまず、こう言う判断になった訳だ。


 残りのアイテムや、さっき拾った粘土板の欠片はバックパックに入れて、背負う事にした。ステータスウィンドウにアイテム欄が無かった以上、このバックパックがインベントリの替わりって事なんだろう。俺は、この有り難い贈り物をもたらしてくれた、ボカシに包まれた惨殺死体に軽く手を合わせてから、通路の先へと進んだ。


 ……


 ……


 ……しんどい!


 多少楽になったとは言え、相変わらず重い身体に長い下り階段は一層堪える! さっきの通路から少し進んだ所で、道はやや急な下り階段になっていた。他に選択肢も無さそうなので、とりあえず下ってはみたモノの……

 行く手を懐中電灯で照らしても、まだ先は見えないし、何かが追って来てるのでは無いかと、来た道に灯りを照らしても、もう階段の最上部は全く見えない。もうどの位、地下深くまで来たんだろう? このまま地球の裏側まで歩かせる気か? 等と毒づいていると唐突に階段が終わり、十メートル四方の小さな部屋にたどり着いた。


 相変わらず無機質な石造りの部屋で、行く手にはアーチ状の通路の入り口が二つあった。入り口の先は、例によって先に長く延びているので懐中電灯の灯りで照らすことが出来ない。俺は部屋の中を入念に調べてみたが、他にはヒントも隠し扉も無さそうだった。


 じゃあ、どうする? 昔の漫画では、こんな二つに分かれた分岐では右を選んだ方が安全とか何とか言ってたらしいが……


 そんな事を考えながら右の入り口の暗闇に目をこらすと、暗闇の深淵から微かに男の苦痛に満ちた悲鳴が聴こえたような気がした。そして……微かな血の臭いが鼻先を掠めた。

 俺は、その声の元を確かめようともせずに、半ば反射的に左側の入り口に飛び込んだ。俺の全身の感覚と、いわゆる第六感が“右側はヤバイ”と全力で警告したからだった。


 それに……変な話だが、今聴こえた悲鳴の声……俺にはそれが、どっかで聞いた事があるような気がしたんだ。NPCを演じている俳優や声優の声ってんじゃ無くって、もっと身近で聞いた事が……それが俺に一層不吉な感じを抱かせて、右側の通路を忌避する一因になったのだが……


 まあ、気のせいだろう。多分。

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