表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/7

気づいたらオークの、それも赤ちゃんになっていた

 気づいたらオークの、それも赤ちゃんになっていた。


 ・・・・・・意味が分からないよ!


 いや、嘆いていても何も始まらない。落ち着いて情報を整理しよう。


 まずはどうしてこんな場所にいるかだ。

 俺は昨日の夜たまった最後のゲームをクリアしてベッドで寝た。それ以外のことは覚えていない。

 そして起きたら知らない場所いた。日光が一切届いておらず真っ暗なことからたぶんどっかの地下とか洞窟の中だと思う。それ以外は一切不明だ。


 ・・・・・・うん。まあ、次にいこう。


 次に俺の今の状態だ。

 俺は今、人間と豚を掛け合わせたような生き物、つまりオークの赤ちゃんになっている。

 現在俺はむき出しの地面に服も着させられずに寝かせられ、そばには何匹が同じようにオークの赤ちゃん、おそらく俺の兄弟たちも同様に寝かせられていた。さっきまで親らしき大きな個体はいたが今は近くにいないようだ。


 目を覚ましたときは本当に混乱した。

 だって起きたらいきなり豚面のドアップが視界に入ってくるんだもん! もし声が出せていたら間違いなく悲鳴を上げていたね! こうやって冷静に物事を考えられるようになったのもついさっきだ。


 恐らく俺の魂は生まれたばかりのオークのベビーの肉体に宿ってしまったとかそんなところだろう。それ以外はやっぱり不明である。


 総評。

 俺は異世界に転生してオークになった。これでゲームを片付けなかったことをぐちぐち言われなくて済んだぞ! やったね!


 ・・・・・・・・・・・・やったねじゃねえよ!? ぶっ殺すぞ!


 どうしてこうなった!? トラックに牽かれた覚えも神様に会った記憶もないぞ! 

 俺はただ自分のベッドで寝ていたはずだ。もしトラックに牽かれたとしたら、トラックは二階の俺の部屋にジャンプして突っ込んだことになる。

 ちょっとその光景を想像してみた。



 ぶい――――――ん(トラックの走る音)

 

 バンッ!(トラックが何らかの手段を使ってジャンプする音)


 ドッガシャ―――ン(トラックが俺の部屋に突っ込み粉砕する音)



 ・・・・・・ガッツあるトラックだなぁ。そこまで俺を異世界に送りたかったのか。そこまでされたらもう俺も仕方がないとあきらめるしかないかもしれないな。うん。


 まあ、冗談はこのぐらいにして。

 とにかく現状では何も分からないということは分かった。意味がないかもしれないが一歩前進したことは確かである。今は体を動かせない状況だからこうやって寝るほかなく、時間をかけながらゆっくりとこの状況を解決する方法を探していくほかはない。


 そんな絶望的と言ってもいい状態だったが、幸い俺はゲームとか得意だし、こういう話は日本で死ぬほど読んできた。


 これってあれだろ? モンスターに生まれ変わった主人公がどんどん上位種族にランクアップしていって、最後の方ではこの世界最強になって俺TUEEEEする奴だろ! 俺知ってるんだからな!


 そう考えると逆にわくわくしてきた! ゲーム脳と笑いたければ笑うがいい! 俺はこの世界で俺の力だけで成り上がってみせるぜ! 見ててくれよな! 


 何もすることができないのでそんな益体もないことを考えていると、ふと何かの足音が聞こえてくる。親がもどってきたのかと思ったが、足音の間隔が全然違うことに気づく。

 ニュー母さんはオークらしく二本足で歩いていたが、この足音は、なんというか四足歩行で歩いているような感じだ。


 小さかった音はだんだんと大きくなっていったが、ふいにその音がやむ。それは足音の主が去っていったのではなく、歩く必要がないくらいすぐそばまで近づいていると俺は察した。


 首はろくにすわっておらず動かすことができないため、その正体を見ることができない。だから体全体を無理矢理動かすことで顔の向きを変えると、


「ぐるるるる!!」


 大きな大きな狼と目が合った。


 ・・・・・・おいおいまじかよ


 その巨体に比例するように口もでかい。少なくとも俺の小さな体を一口で飲み込むぐらいにはでかかった。よくみると大量の涎が狼の口から滴り落ち、さっきから地面に染みを作ってる。

 

 はい俺死んだー! 完!

 いや、待て待て落ち着け俺! 一見怖そうだけど実は親切とかいうのもお約束だろ! まずは挨拶だ! こんにちは! ハロー! ボンジュール! 


「がるるるるるるるるるる!!」


 狼が大きな口を開けてうなる。

 やばい、全然通じない!


 何を言っているのかは分からないが、少なくとも「わー! かわいい赤ちゃんだ! 抱いてもいいかな?」と言っていないことはだけはわかる。完全にくう気満々のようだ。


 本来なら一目散に逃げるところなのだが、逃げようにも今の俺の体は走ることはおろか、ハイハイすらもかなわない。完全に手詰まり状態だった。


 ・・・・・・すみませんさっきの『俺はこの世界で俺の力だけで成り上がってやるぜ!』とかいうやつ、前言撤回させてもらっていいですか? いい? やったー! それじゃ失礼して・・・・・・


 すーー(息を思いっきり吸う音)


 誰かあああああああああああああああああ!! 助けてくださあああああああああああああああああい! お願いしまあああああああああああああすうううううううう! まだ死にたくなああああああああああああい!! 


 オークだからか、それとも生まれたばかりの赤ん坊だからかしゃべることができない俺は、ひたすら心の中で命乞いをした。


 しかし都合よく誰かが返事することはなく、狼の大口がだんだんと近づいていくなか、ひたすら俺以外の誰がどうなっても構わないので、俺だけはどうか見逃してくださいと祈り続けた。


 ・・・・・・今気づいたんだがもしかして俺ってくずなのかな?

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ