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第20話 規制

明けまして、おめでとうございますm(_ _)m

元旦に無断で休んでしまって申し訳ないです。これからも、毎日投稿は続けるつもりなので、よろしくおねがいします。

 それからというもの、俺たちは数十体の骸骨達の軍勢と激戦を繰り広げた。

 既に身体が疲労状態にあり、思うように身体は動かなかった。

 しかし、それでもステータスを向上させたおかげか、前半戦ほど苦労することなく、無事に第1階層を突破できたのだった。


 そして、初日から激しい特訓を終えた俺たちは疲労困憊ながらも、街に帰還したのだった。


「……まさかダンジョンがあんなにも、悍ましい場所だとはな」


「でもお陰様で、かなりレベル上がったじゃない。レベル17からレベル21まで」


「あぁ、この調子で特訓を続ければ、決闘までにレベル30も夢じゃないな」


 それにSPを手に入れたことで、ステータスも上昇させられ、魔物を狩る効率も目覚ましく向上した。

 つまりレベル上昇に伴って、レベルが上がりにくくなった反面、より多くの魔物を狩ることができ、より強い魔物にも挑戦できる様になったのだ。


 よって、メリットとデメリット帳消しで、このレベル帯付近なら、やろうとすれば1日に4つ分レベル上昇させられるということだ。


 特訓できるのは後5日間。概算ではレベル40まで到達できそうだが、実際レベル上昇に必要な経験値量は指数的に、増加していく。

 だから、頑張ってもレベル35前後が限界ラインとなるだろう。

 ――ただどちらにせよ、目標は超えられるだろうから、レベル上げに関しては何も問題はなさそうだな。


 後は今日初めて使えた毒魔法を、どこまで成長させることができるかだ。

 ヴェノムショットは飽くまでも第10級魔法という、初級中の初級魔法だ。

 消費する魔力量を増加させることで威力が上昇しようと、第9級や第8級に勝てないのは目に見えている。



 こればかりは――努力するしかない。



 普通の魔法使いは、普段使う魔法より1つ上位の魔法詠唱に挑戦した場合、完全に成功させるまで、最低でも1000回失敗を積み重ねなければならないという。

 要は身体に魔法詠唱の感覚を染み込ませなければ、成功など不可能というわけだ。


 ……なら、今日の夜から早速やるとするか。


「……一旦、ギルドに寄りましょ。そこで、今日取った魔石を換金してもらわないと」


「そうだな。資金は出来るだけ確保しておくに限る」


 ダンジョンの魔物は地上の魔物と違って、死体ではなく魔石を残す。

 理由は定かではないが、なんでもダンジョン内の魔の瘴気は、地上の物とかなり性質が違う為らしい。


 そして共通する要因から、ダンジョンの魔石は地上の魔石よりも高い価格で売買されている。

 特にダンジョン毎に魔石の成分も大きく異なるため、より高難易度のダンジョンほど魔石は高く取引されるらしい。


 一応、第1階層のみとはいえ、俺らが訪れたのは最難関級のダンジョン。

 その魔石をギルドで売れば、小さくとも、かなりの資金を得られるだろう。


 バーゼルとの決闘に向け、防具や武器を変える必要が出てくるかもしれない。その為には、ある程度お金は貯めておかないと。

 そんな軽い気持ちで、俺たちは夜道を共に歩き、ギルドへと向かっていたのだった。



 しかし――俺らはギルドに辿り着いた所で、初めて思い知ることとなる。

 俺たちが敵にした相手が、どれだけ強大な存在であるかを……。



 素材売却カウンターを見ると、そこには運良くキエラがせっせと、列を成す多くの冒険者を捌いていた。

 アリナを入り口で待たせ、俺は何気なくその列に並んだのだった。

 けれど、俺はそこで、いつもとは明らかに違う気配を感じることとなる。



 ――妙に視線が痛いな。



 何故かすれ違う冒険者の殆どが、俺の顔を見てどこか憐れみの表情を浮かべるのだ。

 それは俺が【異端者】であると気づき、嫌悪するというよりは、何かに同情した様子だった。


 そして、俺の順番が回ってきた。


 いつもなら、にこやかに対応してくれるキエラだったが、今日は俺の姿を見た瞬間、驚いた様に青ざめたのだった。


「ノームさん、どうしてここに……?」


「え……っ、いやいつもどおり素材を売却しようと……」


 その言葉を聞いた瞬間、彼女は何か納得したように頷いた。そして、俺の耳を引っ張ると出来るだけ小さい声で言ったのだった。




「今朝とある行政的制裁が急遽発動されたんです。スチュワート侯領にて……、ノーム=アキナス、アリナ=ギヴァーソン、二人のいかなる公共・商業施設利用権を6日間剥奪すると」




「……は?」




 ――思わず、呆けた声が出てしまった。


 俺は彼女の言葉に耳を疑う。

 しかしその直後、キエラが取り出した書状を一目見て、殴られた様な衝撃が全身を走り抜けた。



 なぜなら、そこには模写魔法で描かれた俺とアリナの姿が堂々と映されていたからだ。



 そして、書状の内容と先程のキエラの発言には、なんら相違点は見つからなかった。

 おまけに書状の右下にはスチュワート侯爵直々と思われるサインが、綺麗に描かれいた。


「い……、意味が分からねぇんだけど……」


「ともかく、人前を歩くのは危険です。時間になったら、ここに来て下さい。事情はそこで聞きますから」


 キエラは震えた手で、小さな白い紙を俺に手渡した。

 そこには初日と同じ様に街のとある場所と、集合時間がキエラの丸っこい字で記されていた。


「……売却すらも出来ないのか?」


「はい、申し訳ありませんが、帝国の法律に則った行政的制裁なので」


「……分かった」


 俺はその書状の複製をキエラから受け取ると、容赦ない視線の雨に晒されながら、直ぐ様ギルドを飛び出したのだった。

 入り口で物寂しそうに待っていたアリナは、俺を一目見るやいなや目をパチクリさせて、不審げにこちらへと近づいてくる。


「ど、どうしたの……?」


「すまねぇ、アリナ。売却――できなかった」


 痙攣した右腕をゆっくりと持ち上げ、アリナにその書状を見せる。

 その瞬間、彼女の顔からサッと血の気が引いていった。圧倒的な力に恐怖したその虚ろ気な蒼い瞳孔は、混沌とした暗闇しか映していなかった。


「一旦街の外に出るぞ。ここにいると、面倒事に巻き込まれそうだ」


「うん……」



 俺はそんな脱力した彼女の肩を支え、歩くことしか出来なかった。

 何もできない無力感と罪悪感に押しつぶされそうになりつつ、ひたすら足を前へと踏み出していく。



 ――あの野郎、権力乱用してまで俺たちを潰すつもりなのか?



 同時に湧き上がる怒りを強く噛み締めつつ、俺はその強大な敵を相手に決意をより固めた。

 どんな手を使ってでも、絶対に打ち勝ってやると……。


「ごめんね……、こんなことに巻き込んじゃって。私が素直に奴隷になっていれば、貴方が制裁を受けることもなかった……」


「何、規制掛けられただけで弱気になってんだよ。罪状もなしに、衛兵に捕まらないだけマシさ」


「でも……全部」


「……心配すんなって、俺はこういう状況には慣れているからな」



 ――絶対にぶちのめしてやる。

 そんでもって、アリナが心から笑れるような環境を、あの侯爵から奪い返して見せる。

 それが常識と世間にとらわれない、【異端者】である俺の今やるべきことだ。


 暗闇の中、俺はそっと彼女のを手を握り、歯を食いしばったのだった。

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