クリスマスイベント14!つづき
このイベントで使うはずだった人の願いを見る魔石は、本来はリューがサラサ様の願いを見たいと願った為に作られた魔石だった。
イベントで使うと言い始めたのはトーマス様らしく、リューはまだ未完成だと反対していたのでこのような形で消費させたかったということだろう。
体感した者から言わせるとそんなに良いものでは無かったし、イベントなんかで使わなくて本当に良かったと思っている。
実験しているとは言え未完成の物をイベントで使おうとしたというトーマス様は恐らくアネモア様の欲しいものを知りたかったのではないか。と考えられる。
そんな事をしなくてもアネモア様の欲しいものなど見れば分かるだろうに。
「着いた、マリー目をつぶって」
「え、あ!」
目的の場所についた私は、馬車を止めてマリーを腕に抱いた状態で地面に降りた。
私の言いつけ通りにぎゅっと目を瞑るマリーは、私に抱きかかえられているのが恥ずかしいのか顔が赤い。
本当に可愛い娘だ。
「目を開けて」
「……わぁ!」
彼女を下ろした目の前には、たくさんの装飾が施された大きなもみの木が植えられていた。
全ての装飾に光がともり、周りを魔石がふわふわと飛んでいる。
「……明日はクリスマスという日になる」
「くりすます?」
「ああ、本来は誰かの誕生日らしいが……ここでは、家族で団欒する日として作るそうだ」
「へぇ……とっても素敵ですね!」
ニコニコと笑う彼女は恐らく家で家族と過ごす絵が頭に描かれているのだろう。
その中に私がしっかりと描かれるようにしたいのだ。
だからこそ、今日会おうと約束をしていた。
「そして……その、前日は」
「…………前日、」
「クリスマスイブと言って、愛おしい恋人と過ごす事が多いらしい」
そう、まだ、愛おしい恋人。
「…………」
「恋人として過ごす最後の年に、君と……マリーとどうしても過ごしたかった。だから無理してここに通してもらったんだ」
「あ……」
私は片膝をついてマリーの手を取った。
見上げるといつもより真っ赤で泣きそうな顔。
「私からも告げたい、婚姻をしたらきっと……もう、どうしてもマリーを手放してあげられない」
「…………はい」
「だから、それの許しを得たいと、思っていたんだ」
「…………」
「だが、先に言われてしまったよ」
見上げていた顔がふわっと笑っている。
先ほど彼女から告げられた言葉を思い出しながらゆっくりと、指先にキスを落とすと、最後の最後まで彼女を手に入れる事ができたような気がして顔が緩んだ。
「愛してるよ、マリー。一生離さない」
「愛しております、ルータス様。私も絶対に離れません。」
そうやって私達の中では、事件は上手くおさまったのだ。
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