クリスマスイベント14!
私の中で日にちの感覚が曖昧でして……今日クリスマスイブって今日知りました。。あれ、明日じゃなかったっけ……。。なので、取り急ぎ投稿致します。
ここからが、今回の本編ですので長めです。
「マリー!」
「ルータス様!体調は……わぁ!」
私は屋敷の階段を降りてきたマリーを近く勢いのまま抱きしめた。そのまま肩に顔を埋めて彼女の心地の良い匂いに包まれる。
「マリー、すまない、約束をしていたのにずっと待たせてしまっていたかい?」
「いいえ、ルータス様が起きられない状態だとは聞いておりましたから……その、会えて嬉しいです」
彼女の手が自分の背中に回ったことが分かると、悩んでいたことなどどうでも良くなる位に幸福に包まれる。
しかし、その幸せは数秒で終わった。マリーが周りに使用人達が居ることに気がついて離れて欲しいと言ってきたからだ。
仕方なく離れ、そして、使用人の1人に話しかけた。
「マリーを少しだけ借りてもいいかな」
「ええ、お話は聞いております」
「ありがとう」
マリーはきょとんとした顔をしていたが、私が出かけたいと思っている事に気がつくと、少しだけ着替えをしたいと言って侍女たちと部屋に戻っていった。
「…………」
マリーも何か知っているようだ。
私が昏睡状態だったならばこの歓迎の仕方は少しだけ彼女らしくない。
「お待たせいたしました」
「とても、綺麗だよマリー」
「……ありがとうございます」
マリーが好んで着る『クチナシ色』のドレスは、私がプレゼントした物をいつも少しだけアレンジして着てくれているようだ。
同じ物をデートで着るというのは余り良くないとされているらしいが、彼女は私のプレゼントを何度も着たいと言っていた。
もし、嫌なら告げてくださいとも言っていたが、自分がプレゼントした服をとても好んで着てもらえることは嬉しいものだ。違うドレスをプレゼントしようとしたところ、それよりも2人で旅行などに行ってみたいなどとはぐらかされて結局買えていない。
サプライズで買ってもいいのだが、彼女が喜んでくれる物を買えるのかどうか心配になり、やはり結局買えずに終わってしまっている。私のセンスと度胸をどうにかしたいものだ。
マリーをエスコートして馬車に乗り込む。
いつもは向かいの席に座っているが、今は隣に座っている彼女を見ると、なにやら緊張しているのか手を握り締めている。
「マリー?」
「は、はいっ!」
「……どうかしたか?」
「と、隣だと緊張して……」
ずっと昔から遊んでいるのに馬車で隣に座ることは緊張するらしい。彼女の絶対にこちらを向かなそうな表情が気に入らず、少しだけ顔を覗き込んだ。
「み、見ちゃだめ……です」
顔を手で覆いながら耳を赤くさせる彼女を見ていると、是非ともこちらを向いて欲しくなる。
「マリー、私は長く寝込んでいたらしい、今は君の顔を長く見たい」
「…………」
恐る恐る手を外すと、此方を伺うような目で見つめる彼女がいる。私は少しだけ口角をあげながら、彼女の手を取った。
「マリー」
真っ直ぐに見つめると手まで真っ赤になった彼女が瞳を少し揺らしながらこちらを無言で見つめてきた。
恐らく緊張して言葉を発する事を放棄しているらしい。
それでも私の意見を聞いてくれるのは、彼女が私に甘いからなのだろう。とても嬉しい限りだ。だからこそ、彼女には隠し事はしてほしくない。
「マリー、私はどうやら誰かに昏睡状態にさせられいてたらしい」
「……あ、え、そ、そうなのですか」
「ああ、しかも相手は私の事を秘密裏に探ろうとしていたようだ」
「…………た、大変でしたね」
「………………ふ」
急に口元を押さえて笑いを堪えている私を困惑した表情で見てくるマリーは、なにやらいつもより挙動不審な気がしてならない。
まぁ、恐らくそれは気のせいではなく。
「隠し事は感心しないな、マリー」
「え!な、な」
「それで、何か私の事を調べる事は出来たか?」
「…………ル、ルータス様、申し訳」
「いや、いい、マリーが私の事を知ろうとしてくれた情報が今回の君へのバツになるだろう?」
マリーの屋敷まで来る間、ルイから渡された手紙読んだ。
そこには、『怒らないであげて』という言葉と『どこからが現実だったのか』という部分が書き出されていた。
恐らく慌てて書いたのだろう、いつも綺麗な文字を書く彼にしては荒れた文字に、彼の優しさが伝わってくるようで嬉しかった。
さて、今回の謎の現象の種明かしをしよう。
今回の1番の犯人は
「リューからなんと誘われた?」
「……その、ええと……ルータス様の今欲しいものを知りたくないかって」
「それで」
「せ、説明を聞いたなら断っていたはずなのですが、それよりも先に研究室に連れていかれて」
そこには、ルイとリテーリアがいたらしい。
今回の実験は、人物の思考をいつもより鈍くするようなものだった。
だから、昏睡状態になったはほんの数日前だが、私の脳内がおかしくなったのはもっと前だったのだろう。
「……その、申し訳ありません、リテーリアがルータス様を危険にする事はないと分かっておりましたのでつい欲が出ました」
「ああ、今回怒るべき相手はリューだから気にしなくていい」
相手を不安にさせる事が第1段階、今回はマリー以外の人物と浮気をさせる事で不安を煽ったのだろう。第2段階はその現場を見せる事で不安を絶望に落とし、第3段階は昏睡状態にさせて心の底で願う事を聞き出すというものだったと書いてあった。
昏睡状態にさせてそのその人物の、体は大丈夫なのかというと、睡眠状態と同じような環境を作り出し、少しだけ意識を回復している状態を保つ事を今回は昏睡状態と記したらしい。
この実験は一応私よりも前に何人か人体実験をしてあり、安全は保障していたという。
他の人物とは誰で実験したのかはしらないが、お咎めがない所をみると、いい人材をみつけたのだろう。
リューがどうしてもやりたい実験で譲らず、ルイとリテーリアが手を貸していたようだ。
「……ルータス様、申し訳ありません、私……やはり、不安に思っていたことが原因かと」
「……不安?」
「ルータス様はとても素敵な方で、私はずっと昔から憧れておりました。ですから、他の方を知ってしまえば私から離れてしまうのではないかとか、1番に欲しいのは私以外の令嬢ではないか、とか、私なんかが望んでしまっても良いものかと」
「そうか……」
「で、ですが!」
彼女が眉を寄せて泣きそうな顔で此方を見た。
目にはたくさんの涙が溢れそうなほど溜まっている。
私の手を握り返した彼女は、私の目を真っ直ぐに見つめてこう言った。
「やはり、私の人生は貴方様に預けたい、ずっと、私を求めてくださいますか」
「ああ、当たり前だ」
想像以上に大胆な発言に、驚き、しかし、永遠に忘れる事の無いように頭に刻み込んだ。彼女を私の腕の中に収めここむ。そんな風に不安がる事など一生来ないように。
彼女がなぜ知りたかったのかは、この年が明けてすぐにある婚姻式までに心を決めたかったのだろうと容易に想像ができた。だからこそ、それを利用したリューを後でどうしめようか。
「あの……ルータス様?」
「ん?」
「その……リュー様を悪く言わないでくださいませんか」
「………………」
「あ、あの、今、サラサ様と喧嘩をしているらしくて、今はやめてあげてほしくて」
リューの事情を知っている事に対して私が嫉妬心を抱いている事は彼女は知る事はないだろう。
だからこそ、心に誓った。リューの事は後でしめよう。
「分かった、今はやめておこう」
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