表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/99

クリスマスイベント10!

「ルータス様……?」


 そこには馬車から降りたマリーの姿があった。眼鏡の奥からいつもよりも動揺しているように瞳を震わせ私を見てくる。


「マ………」


「ルータス様……こんな所で何を……なんです?その隣の美少女……腕を組んで……まさか……!」


 マリーと声をかけようとすると、ずいっと前に現れた人物によって視界を阻まれた。その人物はジロリと私を睨みつけながらマリーに私の姿を映らせまいと両手を広げる。その時、マリーに伸ばしかけた腕をアカネが力いっぱいに引っ張っていることに気がついた。これを見せないようにしているという事なのか。


「リ、リテーリア、違う」


「何が違うと言うのですか」


 私は慌ててそのマリーの前に立ち塞がった人物、リテーリアに否定するも、この光景に言い訳は無理だろう。

 噂で聞かれてしまうという懸念もあったが、それは全くと言っていいほど意味が無かった。しっかりと腕を組む場所まで見られてしまったからだ。

 すっかり営業スマイルを剥がさないアカネに対し、そちらの意味での気を許してしまっていたのが原因だろう。まさか突然腕を組んでこようとするなんて思ってもみない。なんなら初めから組んでくれていた方が警戒を怠ることなどなかったのに。


 そんな言い訳を頭の中では必死に考えた。

 いや、事実な訳だが。


「ア、アカネ、否定を」


「……これは、おデートです」



 まさか、この為にこの娘とデートをさせたとかであれば、本当に大成功だな。そんな事を考えるほど、心はヤケになってしまった。

 マリーには近づけないようにリテーリアは動かないし、アカネも腕を離そうとはしないからだ。

 そして、目の端には顔を俯けながら馬車に戻っていくマリーの姿があった。リテーリアも私をずっと睨みつけながら同じ馬車に戻っていく。


 バタンと閉まる馬車の扉の音を遠くで聞きながら、私は知らないうちに家に戻り部屋で1人頭を抱えていた。



 気がつくと2日経っていたようだ。

 トーマス様に圧をかけられてようやく意識が戻ったらしい。それまで機械のように仕事をこなす私を、ルイとリューが心配していた。とトーマス様が言っていた。


『あまり、無理はするなよ。ルータスは重要なポジションにいるのだから、注意散漫にさせられたらたまったものではない』


『はっ、申し訳……』


『……たまったものではない、し、……友人が落ち込んでいるのはこちらも辛い』


 ふわりと微笑んだトーマス様はそう言うと執務室を去っていった。おそらく事情は知っているはずだが、私の事を心配してくれるだけで素直に心がよろこんでいるのだから私も少し安いのかもしれない。



 少しだけ復活した私は、やはりマリーに直接会いに行こうという結論に至り、その旨を伝える手紙を書いた。

 そして、その手紙を渡すより早く、あちらからの手紙が届いたのだった。





お読みいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ