クリスマスイベント8!
「ここです」
「………ここは、なんだ?」
「えっ、ここは宝石店です」
「いや、わかる」
目の前には磨かれる前の大きな原石が多量に置かれており、素人の目には一体どんな宝石になるのかが予想ができないものもあった。
ただ、これが磨かれれば宝石になるとは予想できるものばかりであり金額も物によってはとても高額だ。
しかし彼女はなぜこの店に私を連れてきたのだろうか。
「なぜ、ここに連れてきたのかという事でしょうか?」
「……あ、ああ」
一瞬、心を読まれたのかと思い息を飲み込んだ。
しかしまぁ、そう思われても仕方がないと本人も自覚しているのだろう。ニコニコと営業の笑顔を向けながら私を見てくる。そして、人差し指を口に当て、ウインクをしてきた。
「ふふ、内緒、デス!」
「……そうか」
本人から聞き出そうとしても無駄ということか。
それならばここに何かしらの謎があるのか。
「好きな物はどれですか?」
「この中でか?」
「ええ!」
そう言って彼女は原石の説明を始めた。そして、まるでここの店員かと思うほどここの商品をよく知っている。これはどんな宝石か、どんな形になるのか、どのような色か。
これは本当に営業なのではないかと疑うほどに口からスラスラと言葉を流してきた。
「…………」
「ふふ、詳しいの、怪しいですか?」
「…………そうだな……」
なんでもお見通しということか。
「アカネは口が固そうだからな」
「ええ、お客様から友達まで、秘密は誰にも話しません」
ニヤニヤと笑う彼女を見下ろしながら、それならば彼女の口からは秘密は聞けないだろうと考える。
「では……秘密ではなければ言ってくれるのか」
「……ふふふ、さぁ?」
なるほど。これはなかなか大変そうな娘だ。
初めて対面し言葉を交わしているが、ずっと営業用の仮面をつけたまま。
これでは探ることは不可能、寧ろ手のひらで転がされるだけだろう。
とりあえず流れに身を任せて商品を買えばいいのだろうか?ここまで詳しいのであればオススメがあるのだろう。
「どれがオススメなんだ?」
その瞬間、彼女の目が光ったように見えた。
「はい、来ました!こちらガーネット!!」
「!?」
突然のテンションの上昇に衝撃が走った。最早ここの店員になることをオススメする位に饒舌だ。
先ほど説明した時よりも弾丸のように話が止まらない。
「ああ……」
「はい!ですのでこの!ガーネット!おすすめでございます!」
「そ、そうか……それを買おうか?」
「はい、買ってください」
是非、と言いながら彼女は置いてあった割と大きめの原石を手に取ると機械のようにスタスタと歩いてレジへと向かってしまった。
突然の急速な行動に動揺し、彼女がレジについて私を呼んだ声で我に帰る。
先程から驚かされてばかりで頭がついていかない。
ぎりぎり考える事が出来た事は、次はどこに連れて行かれるのか、という事だけだった。
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