クリスマスイベント6!
「………………」
目の前に座ったサラサ様がじっと自分を見つめてくる。
当たり前だが身分不相応過ぎて体からの冷や汗と目眩で座っているのに倒れそうだ。
ここから馬車ならほんの少しで着くはずなのに、明らかに遠回りしているであろう時間が経っている。
しかし、自分から話しかけるほど頭が回っていない。
「ルータス、質問してもいいかしら?」
「はい、なんでしょうか」
「あなた、何か隠しているでしょう」
「…………何か、というと」
「リューも知ってると思うの、その隠し事について」
「…………」
なるほど、そういうことか。サラサ様はリューが何かを隠している事を探るために私に話しかけたということか。
しかし、今回の件について話す事はできない。
リューには申し訳ないが、ここは黙秘を続きさせてもらわなければ。
問いかけられてからしばしの時間が経ったが、お互いに視線は晒さず黙ったまま。沈黙だけがそこに流れていた。
突然、馬車が大きく揺れた。
道に落ちていた大きな石を踏んでしまったらしい。
サラサ様は大きなため息をついて諦めたように呟いた。
「あら、そう、私には話したくないということね」
「……今はお話しする事は」
「ふぅん、ま、いいわ、そんな予感はしていたから」
私の言葉を遮るようにしてサラサ様は『もう結構だ』というように扇子をバサッと開き、口元に当てた。
既に興味を無くしたのか私ではなく外を向いている。だが、話は終わらないようだ。
「ところで……」
「はい」
「分かってらっしゃると思うけど、今度ある魔石の練習会にはあなたが教師として参加してもらうわ」
「はい、承知しております」
「教師として相応しい……身の振る舞いをしてちょうだい」
「…………はい」
何かの意味を含まれたかのようか言葉、私の目を見る事なく告げられた言葉の意味をしっかりと理解するには、今の頭では難しいようだ。
馬車から降ろしてもらうと、サラサ様は私を見下ろしながらこう問いかけてきた。
「……ルータス、あなたマリーの事を愛してるの?」
「はい、昔からずっと、彼女だけを」
「そう、それならいいのよ」
“では、またよろしくね”という言葉をかけて彼女は去っていった。
去っていく馬車を見送る。
「寝なければ」
そう呟きながら家へと入った。
しかし、とても疲れた体は睡眠を欲しているはずなのに、その日は一睡もすることは無いまま朝を迎えてしまったのだった。
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