「69!」
「んー……これは一体どんな状態なの」
ルイ・アントンが呆れたような声で私達に声をかけてきた。それはそうだろう。
何故なら今、ルイ・アントンの両手は後ろに(緩く)縛り上げられ、椅子に座らせられている。
正面にトーマス殿下、その左には姉さま、姉さまの横には私が立っている状態だ。
私と殿下は昨日、管理人についてのわかる限りの話を出した。
と言っても私は殆ど分かることはなく、殿下からも、この世界を管理している人物で、姿はなく、声も表すことが出来ない声をしていた。という事しか分からなかった。
でも、殿下はルイ・アントンが管理人かもしくは、何かしらに関わっている人物なのではないかという事で早速話を伺うことになったと言うことだ。
「なに、話しを伺おうと思ってさ」
「話しを…伺うっていう体制ではないと思いますねぇ殿下」
「へぇ、ルイから殿下なんて久々に言われたな」
「…………あれ、何かしたかな、俺」
少しだけ戸惑いを見せながらルイ・アントンは首を傾げた。
確かに突然連れてこられて椅子に座らされ、手を(緩くだが)縛られて前に人が立ったら誰でも驚くだろう。
殿下がゆっくりと前に出て話し始めた。
「この、世界について、知っていることを話してもらいたい」
「この世界?どういうこと、トーマス」
「例えば、ここは私、いや……俺が作ったゲームの中の世界、とか」
「…………」
トーマス殿下がそう言うと、ルイ・アントンは少しだけ表情が固まった。
そして、何も言うことなく黙っている。
「ルイも、俺と同じ世界の人間だったんじゃないのかと、思ってね」
「…………んー。では、その時の俺の名前はなんだろうか」
「それは……」
やはり、思い出せなかったのか殿下は口を閉じてしまった。
ここまで言えば何かしら言うと思っていたのだろう。
でも、確実にルイ・アントンは殿下達のいた世界の事を知っているのだ。
「ねぇ、トーマス、他に俺についての情報は?」
「……この世界の歴史を一緒に考えた」
「うん」
「そして、お前からこのゲームを乙女ゲームとして作る事を提案してきた」
「おー。なるほど」
「……あとは、好きなやつがいて、その子は天体観測が好きでプラネタリウムをいつか作るとか、完璧なポン・デ・リン……」
「ちょ、と、まって」
「ん?」
「なんでそこだけピンポイントで言ってくるの?卑怯じゃない?しかもほんにんが…………はぁ……」
途中まで勢い良く言っていたが、こちらを向いたかと思うと急に落ち込みながら話し始めるルイ・アントン。
そして、姉さまに耳打ちされる殿下。
「……おそらく、リティちゃんが」
「……ああ、わざとだよ」
私はプラネタリウムという物と、ポン・デ・リン何ちゃらの存在は分からないので何を殿下が言ったか分からないが、それによってルイ・アントンが慌てたのは明白だった。
なんで?
「はぁ…………しゅんや酷いってほんと…なんでここで言うのかな」
「本人が分かっていなければ言ってないのと同じだろ?」
「いや、……それもそれで辛いの分かって」
そう言うとルイ・アントンはとてもうなだれていた。
殿下は構わずに口を開く。
「それで、合ってるという事でいいのか?」
「…………まぁ、そうだな」
「…………?」
「事前に言っておくけど、俺は管理人とやらじゃない」
「では、なんなんだ?」
「俺は……ただの巻き込まれた人間だよ」
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