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「68!」

 お米から作成された特別な粉と、サラサ様が最近開発した“トウフ”と呼ばれる食材などを使ってモチモチのドーナツを作る事ができるそうだ。


 私は今エリサとともにキッチンでそれを作成している。


「この、トウフという食材も面白いよね、白くてプリンみたいな感じ」


「そうですね、この商品を作るのかなり苦労されたみたいですよ」


「それでも作る根性がすごい」



 ルイ・アントンが私に教えたレシピ通り作成すると、モチモチのドーナツが出来上がった。

 揚げるところはどうしてもやらせてもらえなかったので、ちょっと不満が残る。


「流石にお嬢様に揚げ物はさせられません、絶対ダメです」


「いいじゃない、けち」


「そんな目で見てきてもだめです」


 だめなようだ。

 それにしても……。


 このモチモチのドーナツも、天井に広がった星空も、サラサ様曰く、前の世界にあったものらしい。


 そして、ルイ・アントンが私に渡してきたこの本。

 ホームズという名前の名探偵が医師のワトソンと共に時間を解決していく内容になっていた。


 とても面白かった。

 しかし、なぜか内容に覚えがある場所があった気がする。




 うん。これでもし、何もないというなら、逆に問いたい。


 そもそもルイ・アントンは初めから私を“リテーリアちゃん”と呼んでいた。

 この間話題に上がった“ちゃん”付けだ。


 そして、魔石の適性の話が出た時に、詳しい調査をしなかったと言っていたのを覚えている。

 後から考えればそれはおかしいのだ。

 だって、私の父様が姉さまの検査を拒否するくらい断らないと検査をしない事は出来なかったはずで。

 さらに言えば、この間は天井に星を映し出す機械は作ったと言っていた。



 私には、何かあると、言っているとしか思えない。


 しかも、あえて、私に向けてやっているところとかがわざとらしい。


 なんだろう。

 私に何を気づいてほしいんだろう。



「うーーーん」



 そういえば、トーマス殿下の“香織様に会わせてあげる”という話しはどうなったんだろう。

 結果的に言えば既に前払いで彼女は姉さまとして存在していたから無しということなんだろうか。


 まぁ、香織様に会うために私たちを駒を扱うかのような形で後ろで操作していたのだから気にしなくても良いのかもしれないが

 でも、なんだか殿下も騙されていたようで少しだけ可哀想だ。



「お嬢様、これをアネモア様のところへ持っていくのですよね」


「うん、そう、包んでくれてありがとう」


「いいえ、お嬢様」


「エリサも一緒に行けたらいいのになぁ……」


 侍女が学校を歩き回れるのは何かしらの理由がある場合のみだ。お菓子を持っていくだけでは理由にならない。


「ふふ、お気持ちだけで嬉しく思います、お嬢様」



 頭の良い侍女は一緒に勉強できるようにするというのを提案してみよう。

 殿下達や父様に進言することを誓った。




 ________





「これ、とっても懐かしいわ、手作りのモチモチドーナツ」


「懐かしい?」


 私は姉さまの元を訪ねていた。

 そこにはすでにトーマス殿下の姿があり、私の密かな望みだった2人きりのお茶会は今回も廃止になってしまった。でも伝えていた訳ではないから仕方がない。

 最近全然2人でお茶ができないでいるので、今度お願いしよう。

 ただ、殿下と話す時の姉さまはとても可愛いので、悪くはないといつも思ってはいる。

 それよりも今姉さまがこれを懐かしいと言った方が気になっていた。


「ねぇ、トーマス様、前の世界であの彼がよく作ってらっしゃいましたよね」


「ああ、そうだね……いつも差し入れで持ってきていたね」


 前の世界のことならば良く分からないので私は“へぇ、そうなんですねー”と言って聞き流しているとトーマス殿下がこう言った。


「この間言ったね。ここの世界の歴史を一緒に作ったやつのこと」


「あ、へぇー…………その人が?」


 その人物がドーナツを作成していた人物らしい。

 そういえばルイ・アントンもこれを手作りして私に食べさせてくれたんだった。


「そう言えばあいつが乙女ゲームって言い出したんだっけ……」


「え?」


「ああ、その、ドーナツを差し入れに持ってきた奴が、お……私の作ったゲームについて色々言ってきて、乙女ゲームに作り直しさせられたんだ」


「どういうことです?勇者のゲームでは姫様の登場が少ないからでは?」


「いや、その後に一回作るのを止めたんだよ。一度完成まで持って行っていたものをまた始めから作り直すというのは、気力が必要だからね」


「そんな時に、その方が乙女ゲームを持ってきたのですか?」


「そうだね」


「ふーーむ、そして、ここの世界の歴史を一緒に考えたんですか」


「そうなるね」


 どういう事だろう。


「リテーリア、そのドーナツは誰に教わったんだい?」


「ルイ・アントン様ですが……」


「いいね、ルイか。面白い」


「面白い……?」


「今度ルイを呼んで4人でお茶会をしようか、聞きたいことができた。そのお茶会の為に例の管理人についてまとめておこうじゃないか、リテーリア」



お読みいただきありがとうございます。


ついに1分更新が遅れてしまった。悲しい。


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