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「58!」

 私が姉様の部屋に行くと、姉様が高熱を出して何日も倒れている事を知った。


 最初に私に会いたく無いと言った日は本当に落ち込んでいたらしいが、それから3日後には熱があったという。



 姉様は、周りには内緒にして欲しいとマリサに言っていた為に、お医者様に診てもらいながら様子を見て居たようだ。


 だが、一向に熱は下がらず、ついにマリサがエリサに話したらしい。




「…………姉様」


「リティちゃん……?」


「……なんで言ってくれなかったのですか」


「…………ごめんね、リティちゃん、心配かけたくなくて」


「心配くらいさせてください、姉様。何か欲しいものはありますか」


「そうね…………」


 そう言うと、姉様が辛そうに目を閉じた。


「姉様……?」


 慌てて駆け寄ると姉様の静かな息だけが聞こえてくる。

 寝てしまったらしい。

 私はそっとその場を離れると、近くに置いてある水の入った入れ物にタオルをつけて絞った。

 姉様のおでこにのせてあげよう。



 医者が言うには魔石の器具で調べてみたが、病気の反応は無かった。過労か、精神的なものだろう。という事だった。


 こんなに長期間熱が出るなんて普通ありえない気がするのだが、そんな事あるのだろうか。


 そう思っていたら姉様の侍女のマリサが入ってきた。


「あ、アネモネ様お休みになってます?」


「え?うん、寝ちゃった」


「はぁーー。そうなのですね、よかった……アネモア様、あまり寝れていないようでしたから。眠れているのでしたら嬉しいです」


「え……そうだったの?あまり寝てないの?」


「はい、寝ていてもずっとうなされているみたいでした」


「んーー……もっと早く教えて欲しかった」


「……アネモア様からこんなに強くお願いされる事がありませんでしたから……申し訳ありません」


「…………」


 ひどく辛そうな顔をしている姉様を見る。


 どうしたの姉様。何か悩みがあったら教えてほしい、私では頼りないの……。



 おでこに冷やしたタオルを乗せると、少しだけ辛い顔が和らいだ気がした。


「姉様……」


 そう、呟いた時、姉様が目を開けてこちらを見た。


「姉様?」


 起きたかと思って声をかけて顔を覗き込むと姉様が手を伸ばしてきて私の手を掴んできた。焦点が合っていない目が私を見つめる。


「あかりちゃん……ごめんね、私あなたを…………」


「…………え?」


「ん……あ、れ?ここは……」


 少しだけ意識が戻ったのかしっかりと()に声をかけながら姉様が体を起こそうとしてきた。

 私は姉様の枕を少し直してから体をベッドの方に戻してあげる。


「……姉様、姉様はまだ体調が悪いみたいですから。ゆっくりお休みになってください」


「…………リティちゃん?」


「はい、姉様」


「リティちゃん、私は、ちゃんとお姉さんかしら」


「ん……?姉様は、いつも素敵な姉様ですよ」


「そう……嫌いにならないでいてくれるかしら……」


「……私はずっと姉様のことが大好きですよ」


「ふふ……私もね、ずっと大好きよ………」


 そう言うとまた目をつぶってしまう。しばらく経つと寝息が聞こえてきた。


「………………おやすみなさい、姉様」



 大好きな姉様。

 待ってね、今に色々と解決させてみせるからね。


「マリサ、ちょっと聞きたいことがあるのだけど、いい?」


「え?はい、構いませんけど」





 __________




「アネモア様の性格?」



 姉様の部屋を訪れた次の日、サラサ様とマリー、リューが集まった部屋で私は本題に入る前にサラサ様に姉様の性格について聞いていた。



「はい、姉様の性格はどうでしたか、乙女ゲームのイベントで、クッキーを作ったり、マフィンを作るイベントはありましたか」


「今のアネモア様の性格と変わらなかったように思うけれど……イベント、思い出すから少しだけ待って」


「……はい」


「なんでアネモア嬢のイベントについてなんか聞くの?」


「……私の予想では、クッキーのイベントはあったかもしれないけど、確実にマフィンは無かったんじゃないかと思ってるの」


 そう言うとサラサ様が難し顔でこちらを見てくる。


「……そうね、クッキーはイベントというか普通にあげると好感度が上がる商品だっただけよ。マフィンはないわね」


「なるほど」


「なぁに、リテーリア。何か分かったのかしら」


「はじめに、高林俊哉について聞いてからでもよろしいでしょうか」


「ふふ、いいわよ、では、高林俊哉について覚えている情報を伝えるわ」



 高林俊哉。

 主に乙女ゲームを製作する会社の取締役代表

 32歳で『愛と奇跡の結晶をあなたと』を発売すると、その後も数々の作品を生み出販売していた。


 個人では趣味で鉛筆画を書いてあり、個展を出したりもしていたらしい。

 独身で、数々の女性達を泣かせていたと言われていたが、噂によると、婚約者がいるらしく、結婚目前だったのではないかと言われていた。



「特に、女性に関するニュースがネットに多く流れていたわ。私もちょっと見ていたし。この、鉛筆画の個展も観に行ったし……」


「ネット?」


「あー……個々人の意見をまとめてそれらを見れる機能があったのよ」


「高林俊哉には、婚約者がいたのですか」


「噂よ、でも……あの鉛筆画の絵の中にも何点か女性の絵があったけど、多分全て同じ女性だったし、お付き合いしている女性はいたはずよ」


「では……弱点はその女性でしょうか」


「おそらくね、ただ情報がないのよね……」



 高林俊哉は、死んで、殿下になった。

 婚約者とは、どうなったのだろうか。

 残してきてしまっただろうか。



 例えば未練があった。としよう。


 それを叶えてあげると言われていたら、叶えようとするはずだ。


 それが婚約者との再会だとしよう。


 しかし、その婚約者が、姉様に似ているとしよう。


 いや、寧ろ。



「姉様が、その婚約者だった……かもしれない」


「うそでしょう!」

お読みいただきありがとうございます。


次で疑問点については解決する予定です。

やっとかよ!遅いよ!

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