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「5!」

 母さまから刺繍を習い始めてはや三週間が経過した。


 私は、未だに母さまの「ロー」までしか刺せていない。でも着々と上手くなっているのは分かる。だって、ゆびに針を刺す回数がとても減っているもの!と思うようにして慎重に刺して行く。

 母さまに渡すハンカチは私の血の斑点がたくさん付いているため、また名前を刺す約束で今回は渡さない事になった。

 仕方ない、あんな血のたくさんついたハンカチなんて渡すものか。母さまを呪いたいわけではない。




 ところで姉様の刺繍はと言うと、私をあっさりと裏切るその器用さは、予定していた百合の花、Tの文字だけではなく、百合の横には違う花が添えられ、文字はなにやら違う文字も入ったらしい。



 うん、知ってたわ。姉様が器用なんて。やれば出来てしまう人だって。

 でも私はまだ姉様のあの数字は見ていない。ハンカチが出来上がって、お茶会というお披露目会の後に見ると決めている。



 しかし、何故姉様は今まで刺繍はやらなかったのだろう。あんなに器用なら刺繍を始めていてもおかしくないと思ったし、母さまは姉様に教えたかったはずだ。


「指が血だらけになってしまうと思ったのかな?」

 今の私のように……?



 ーーーートントン


 その時誰かが扉を叩く音が聞こえた。

「??はーい、だぁれ?」

 私は今エリサと部屋で刺繍の練習をしていた。私は誰か見ている時でないと刺繍はしてはいけない決まりになっている。なんせ、たくさん指刺してますからね。



「リティちゃん、アネモアです、入ってもいいかしら?」

 ひょこっと扉から顔を出した姉様は、今日も変わらずキレイでありかわいい。

「姉様!当たり前です、入ってください。エリサ、お茶を出してほしいのだけど」

 姉様が来たので少し休憩の準備だ。目をキラキラさせたエリサにお茶の準備をお願いする。


「かしこまりました。この、エリサ、先日侍女長にお茶の提供許可を得たばかりでございます。是非ともアネモア様にも飲んで頂きたく思います」

「まぁ、素敵ね!あの侍女長の試験大変でしょうに」

 

そうなのだ。ここの屋敷では侍女長の試験が全部の項目にあり、それを合格することで提供が可能になる。

 エリサは私以外への紅茶提供の許可が先日取れたばかりで、この合格まで3年かかったらしい。


「おいしい!こんなおいしい紅茶をもう淹れることができるなんて、リティちゃんがうらやましいわ」

 エリサが嬉しそうに頭を下げている。私もとっても嬉しい気持ちになる。鼻が高い。

 本当におめでとう、エリサ。




「そういえば、リティちゃん。今日来たのは、この間のリティちゃんのお話しでダンスがとてもやりたそうだったから、やらなくてもいいのかなと思ったから来たのよ」


「……はっっっ!!!」


 完全に忘れていた!!あまりにも刺繍が難しく大きな壁になっていたために一番重要なダンスの事が頭から抜け落ちていた。でもこの姉様の反応からするとやりたくなくなってしまったという事はないだろう。

「あ、あの姉様、ダンス、姉様の見てみたいのですが」

「えっ」

「だめでしょうか」



 昔は姉様と一緒にダンスを習っていった気がするのだが、ある日からダンスは一人で習うようになっていた。姉様が勉強が忙しくなってしまったから私とのタイミングが合わなくなってしまったというのが理由のようだったが、また一緒に習うようになっても大丈夫かどうか見てみたい。

 私のダンスは勢いで踊っているようだというのはダンスの先生からよく言われているので、いつも優雅な姉様のことだからダンスもきっと優雅に踊るのだろうと思っていると。




「あのね、私、実はダンス苦手なの」

「姉様が?」

「そう、だから、お勉強したいってお父様に頼んでダンスの時間を少なくしてもらっていたのよ」

「そうなのですか」

「うん……そうなのよ」



 紅茶のカップを持ちながらもう片方で頬に手を当ててうつむいている姉様はまさに憂いを帯びているの見本の姿をしている。でもまさかダンスが苦手とは思わなかった。


「姉様は運動が苦手……でしたでしょうか」

「いいえ、ええっとね、少し恥ずかしいのだけれど」

「はい」



 姉様は神妙な面持ちでゆっくりとカップをソーサに戻す。





「…………ヒールのかかとは、とても尖っているのよ。」

「……………。」

「……………。」




 えっ?


明日くらいからステータスとかを出していきます。

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