「40!」
本日は2本投稿してます、ご注意ください!
「ルイ、何してんの」
「リューこそ、そんな勢いよく扉開けなくてもいいよね」
入って来たのはリューだった。
いつものリューであればノックはちゃんとするはずだし、取り乱す姿は見たことない。
でも今のリューは少し息が切れていて余裕が無いようだった。
「ねぇ、サラサ様ってここにいるんでしょ?」
「俺も確認しに今入ったところだし、ノックしても何も反応なかったよ」
「……反応ないのに、ルイが扉なんて開けるの?」
「今みたいな事態が起こりそうだったからね。扉開いてるかの確認と、向こう側に物が無いか確認しようと思って」
「…………」
「ちょっと、あまり歩き回らない方が」
リューが部屋の中を歩き回る音が聞こえる。
できれば、中を見て欲しくないが、絶対にのぞいて来るだろう。
私はブランケットを顔まで被せてほんのり偽装をはかる。
コツコツと近づく音が聞こえた。
___バサッ
ついに開かれたカーテンに、バクバクする心臓の音でバレないか心配になる。
「サラサ様?」
「………………」
静かに私の寝ているソファまで近づいたリューは、ソファの下までは確認していないようだ。
ここは、ひとまず、起きるか?そう思っているとリューが話し始めた。
「さくら……なんでしょ」
「!!」
ポツリと出た単語に驚きを隠せない。
この間聞かれた“さくら”という名前は、サラサ様の事を指していたというのだろうか。
「僕は、ずっと探してたのに、さくらは僕に会いたくないの?」
「…………」
「会いたいって言葉は嘘だったの。何か、しちゃった?それなら今から、なおすから、だから……」
弱々しい声に、つい見てしまいそうになる。
こんなに辛そうな声をされたら、こっちも辛くなる。
早く私だとバラして慰めてあげたい。
そんな事を思っていたら机の下からひどい嗚咽が聞こえて来てガンッと何かがぶつかる音がした。しばらくしてサラサ様が下から這い出てきてソファに座る。
驚いてブランケットから顔を上げてサラサ様を見た。その姿にぎょっとする。
(サラサ様その頭はやばいです……)
サラサ様は、私が引くくらいに泣いていた。
さらに化粧も落ちているし髪もぼさぼさで服に少し埃がついている。
これは、皇女様としてちょっとまずい姿なのでは……。
そんな私の心情とは打って変わり、2人の間にはなんとも言えない暖かい空気が流れていた。
「さくら、でしょ?」
「うう……ひっく、うん、そう」
「ふ、酷い顔」
「だ、だって……リューが、きゅうに、くるから……」
「ずっと逃げてたくせによく言うよ」
この少し個室な空間にこの2人と私。
とてもいい雰囲気なのに私の存在が邪魔すぎる。逃げたい。でも、逆に動くと壊してしまいそうで動けない。
ルイ・アントンは何をしているのか。
この2人の事情が分からないと何でこうなっているのかわからない。
何故サラサ様をさくらと呼んでいるの?何故そんなに親しそうなの?何故逃げてたのにあっさり出てきたの?
サラサ様のステータスは見れないし、リューはサラサ様のステータスが見れないと見れない。
探れない、分からない。
ソファに座っているサラサ様にリューは近づいて顔を覗き込んだ。
サラサ様は顔を手で覆う。
「なんで隠すの」
「こんな酷い顔見せられないよ!」
「初めてちゃんと見れるのに」
「これは、サラサの姿だから、私はもっと、ブサイクなの!」
まって、追いつかない。思考が追いついていかない!
初めて見れる?サラサの姿?
ああ、聞きたい。どういうことなの!
おさまって!私の好奇心!
私の存在を無視して2人の話は進んでいく。
私は2人に知られないように、ゆっくりとゆっくりと体を動かして個室の入り口の方を向く。
すると、ルイ・アントンが顔を覗かせているのが見えた。
彼は私に気がついたのか小さく手を振ってくる。
なんだか表情が楽しそうだ。
この状況を楽しんでいるな!
なんとなく悔しい気持ちになったが、今はそれはどうでもいい。
“たすけて”
口パクで彼に話すが、分からないのか首を傾げている。
“たすけて”
しばらく彼は悩んだ仕草をした後、ああ!という表情をすると手をカーテンに掛けて閉めてしまった。
ええーー、なぜー!!!
私は唖然とした表情で固まった。
なんで閉めたのか……。
なぜここに3人で閉じ込めたのか。
ルイ・アントン、許すまじ。
お読みいただきありがとうございます。




