愛してもいい世界。
今日2本投稿ですー
天から聞こえてきた声に、初めはとても驚いた。
言うことを聞かない体が、同じ光景を映して終わっていく。
それは、そんな世界を何回も繰り返し自分から動くことを諦め掛けた、そんな時だった。
「あと何回かなー」
「うわぁ!」
「ひゃあ!!」
突然天から聞こえてきた声は、自分に対して発された訳では無かったけれど、今までの日常では起きたことがない、特別な変化だった。
行動が制限されるなかで、彼女と夜に話すことができる事は自分が自分でいることが許される貴重な時間となった。
幸せな気持ちを感じる、唯一の時間。
彼女とは、とにかく様々な事を話した。
彼女は名前を『さくら』と名乗っていた。
私に似合わず可愛い名前なのと言っていたが、きっとそんな事はない。
顔は見えないのに声で分かるその表情に、だんだん惹かれていくのが分かった。
でも、相変わらず体の動きは制限されており、たまに自分では感じない気持ちを無理やり加えられて動かされることもあった。
彼女のことが好きなのに、想いを伝える事は出来ない。
気持ちを伝える直前は、自分の本当の気持ちが封印されてしまう。
心が消える。自分が消える。
好きという言葉は伝えられない。
そのかわり、会いたいとか、顔が見てみたいとか、側に行きたいとか。そんな言葉を頑張って伝えた。
この日常が変わらなくても、彼女と話せるだけで充分だと思っていた。
そんなある日彼女か言った。
「この世界に生まれることができるかもって!」
その言葉に自分は恐怖を感じていた。
「え?そうなの!」
「うん!これで本物のあなたに会えるのね!」
「あ……そ、そうだね」
「嬉しくないの?」
「いや、とっても嬉しいよ、さくら。早く会えるのを楽しみにしてる」
彼女がいる世界は不安で仕方がない。
誰なんだろう。どこにいるんだろう。
会った時、その時に自分は、自分でいることができるのだろうか。
真っさらな存在になってしまわないだろうか。
でも、きっと、結局あなたに会いたいと願ってしまうのだ。
一度だけでもいいから、この手であなたに触れてみたい。
ただ、愛してみたい。
愛してもいい世界がいい。
お読みいただきありがとうございます!




