「34!」
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「突然入って申し訳ありません!ルイ・アントン様!私の日記帳を探しておりまして、慌てて入ってしまいました!」
入った直後、腰を90度の角度に曲げながら叫ぶように言った。
突然入ることが無礼なことであるのは承知していたが、ルイ・アントンは許してくれる人物だと思っている。
殿下とルータス様が居たと知らなかったのだから仕方がない。
「おや、アネモアの妹君じゃないか」
「リテーリアちゃん……女の子なんだから、もうちょっと優雅に動いてほしいな」
「リテーリア嬢は元気があっていいな、マリーに少しわけてあげてほしいよ」
殿下はいつもと変わらない口調でルイ・アントンとルータス様は私を少し嗜めるように言ってくれる。
「申し訳ありません」
「頭を上げていいよ、妹君がほしい日記帳はこれだろうから」
「え!?」
殿下の言葉に頭を勢いよく上げた。
3人は中にあるソファ席に座ってお茶を飲んで居たらしい。テーブルの上には湯気が立っていないお茶が3つ置いてある。
そして殿下の手元には私のいつも見ている日記帳が収まって居た。なぜそこに!
「あ、えっと」
「大丈夫、中身は見ていない」
そう言いながら殿下はにこやかにこちらを見ていた。
私の殿下に対する敵認定値、より上昇。
「そういえば、体調は大丈夫?」
気がつくとルイ・アントンが近くに来ており、顔を覗き込まれている。
「……あ、は、はい。ご心配をおかけしたみたいですみません……」
「そう、良かった。でも座った方がいいね、少し顔が赤いみたいだし。紅茶いれてあげるからこっちにおいで」
そう言いながら私の手を取ってソファに座らせてくれた。
びっくりした。すごく近くに顔があったから顔も赤くなってしまうし、恥ずかしい。片手を頬に当てると少し熱を持っていた。
ソファに座ると殿下が日記帳を渡してくれた。
殿下は背もたれに背を預けて私を見る。
「日記帳は誰にも見られたくないだろう、しっかり保管しておかないとダメだよ」
姉様と同じようなことを言う殿下はいつものように笑みを浮かべている。
「……姉様と同じ事を言われると思いませんでした。ありがとうございます」
「……アネモアも同じ事を言っていたの?」
「はい、姉様にも、誰にも見られたくないでしょうと言われました」
「……そう、まぁ、じゃあ気をつけるんだよ」
「分かりました……殿下も日記を?」
「ああ、まぁね、記録は大切だから」
「記録ですか……」
「何かな?」
私の言葉に疑問が浮かんだことが知られたのか、殿下がゆっくりと体を起こして膝に両肘を乗せる。その動きが止まるのを確認し、私は話し始めることにした。
「殿下の、誰かに見られたくない事とは何を指しているのですか?」
「…………その情報はきみに必要かな?」
「では、私に必要な情報を聞かせてください」
「…………」
「姉様のことどう思ってらっしゃるのですか」
殿下がじっと私を見つめてくる。いつもの貼り付けたような笑顔はない。
「アネモアのことは、大切に思っているよ」
「殿下は、恋愛の意味での好意を姉様に抱いていらっしゃらないと」
「……リテーリア」
殿下の制止に私は目線を晒さずに殿下を睨む。制止の理由は明らかだ。これからも姉様を利用するだけなら許すことはできない。
「私は構いません。でも、姉様には好意を伝えてください。姉様の悲しそうな姿を見るのは辛いのです」
「……今、一番大切に思っているのは、アネモアだ」
「今日はその言葉だけお受け取りいたします」
「…………」
「…………」
「あの、トーマスとリテーリアちゃん、クッキーあるから、食べようか、用意するね」
最後にルイ・アントンが私達の間に入ってこの小さい争いは終わった。
この学園内だからこそ、対等な立場を築かなければいけない殿下は私を制止しきれない。
あまりやり過ぎはいけないが、ここまで言えたのはこの場が学園だからだ。
今日はここで引き下がるが、あの妙な数値だ。何かあったら好意を抱いてくれるはず。そう思って好機を狙っている。
また男性3人に囲まれている状況に、ルータス様のダメだと思う基準は、私が自ら入った場合は免除されるのかなと考えていると、
ルイ・アントンが思いついたかのように言い始めた。
「そういえば、リテーリアちゃんが適任じゃない?」
「え?」
「そうだな、頭もいいし」
「ああ、じゃあその日記帳を拾ったお礼ということで、承認してくれるな?」
「え、なんです……?」
なんだろう。とても嫌な予感がする。
3人の目がこちらを見てきた。嫌な汗が伝う。
「サラサの友達になってくれ」
………………ああ、なんという。
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