「32!」
本日2本投稿しております、読む際はご注意ください。
私は姉様をカフェテリアで待ちながら、白紙の日記帳を開いていた。
クッキーの件は姉様に聞くとして、時間があるようならユリエスタ様のステータスでも見ようと思ったからだ。
ただ、昨日の事を少し振り返ってからステータスのチェックを開始することにした。
昨日、マリーとルータス様の大演劇、いや、お互いの気持ちをしっかりと理解したあの会話のあと、完全に外部者の私は、
(ユリエスタ様とは今度しっかり挨拶をしよう。でもじっくりあなた様のステータスを確認させていただきます)と思いながら、隠れるようにしてあの場を退散した。
帰宅し、日記帳を開くと、この間飛び出して来た火花が10回ほど飛び出して来て、火花が『クリア!』という文字を出してきた。
椅子から転げ落ちることは無かったが、普通にびっくりして心臓がばくばくと激しい音を立ててそのまま死んでしまいそうになった。
ほんと、いきなりは反則だと思うの。
ユリエスタ様のステータスも気になったが、《クリア》と目の前に出ていると、クリアした後どうなるのか気になってしまう。
そのまま2人のページを見た。
《お互いの想いが通じ合いました!ルータス&マリールートクリア!!》
《クリアボーナスとして、ポイントが貯まります。成功報酬まで残り55必要です》
またよく分からない単語が出てきた。
……成功報酬?なにそれ。
「成功報酬ってなに?」
《始めに約束されたポイント報酬のことです》
「そのポイントってどういうこと?」
《クリアした時に得るポイントです》
「そもそも始めっていつ?」
《約束が始まった時です》
「その約束とは」
《これらを成功させると報酬を与えるという約束のことです》
「そのこれらってなに?」
《これのことです》
「…………」
あー!もう、なんにも分からなーい!これってなに!
始めってなに!
そもそもこれに、『始めて』は存在した?
だって突然姉様のステータスが見えるようになったのって……。
姉様が殿下とお茶会がある、1ヶ月くらい前だよね?
でも、誰とも約束なんてしてない気がする。
これをやれって指示された訳じゃない。
私の意思でやり始めたはずだ。
もしかして誰かを通してこれを見ているの?
私の意思って本当に『私』の意思なの?
「あー……エリサがいないよ……あそこでルータス様たちに会えると思ってなかったし」
エリサに待っててもらえれば良かったと思いながら、改めて夕方の出来事を思い出す。
そもそもあそこに居合わせたのがおかしいとか?
確かに今思えば、どんな確率だよって思う。
誰かに導かれたとか……?
うーーーむ。
最早それって神さまみたいじゃないか。
人を操って動かすとか、意識乗っとるとか。
「………………」
暫く考えて日記帳を閉じた。
誰に聞くことも出来ないような難しい問題は……考えないに限る。
「寝よう」
そうして私は眠りについたのだった。
※ ※ ※
新たな「!」保持者、ユリエスタ様のステータスを見ようとすると、姉様がこちらに急ぎ足で来るのが見えたので日記帳を閉じた。
「リティちゃん!」
「姉様!」
「はい!これ!昨日作ったクッキー!」
姉様が嬉しそうな顔で、可愛いラッピングがされた袋を差し出してきた。
その中には白い普通のクッキー。
「姉様まさか……これは……!」
「そうなの!全部焦げなかったわ!リティちゃんのお陰ね!」
姉様と抱きしめ合う。良かった、良かった、あの変な酸っぱい薬を飲んだ甲斐があったね!
いつも通りいい匂いがする姉様は本当に嬉しそうに殿下とのクッキー作りの事を話してくれる。
「料理場に向かったらね、殿下が既に材料を用意してくださっていたの」
そして、作る前に『成功する確率を上げる石』を握って一緒に祈り、作り始めた。
その石からちゃんと『力』を受け取り、その力を成功するように祈りながら、『力』を流し込むように混ぜた。らしい。
「だからね、このクッキーを食べると元気になってる気がするのよ!」
「…………へ、へぇ!すごいですね姉様!」
それ……魔石では?
まさか殿下、姉様の適性を測るためにやったんじゃ……!
「ぐっ……」
「どうしたのリティちゃん?」
「なんでもないです、姉様」
ニコッと笑いながら私は怒っていた。
何も知らない姉様を騙すように検査しやがって。
まるで詐欺じゃないか!
全く信用できない!
今後も、何考えてるか分からない殿下は敵だ!
私の中で、殿下を敵認定することが決定された。
姉様のためにも、姉様に絶対惚れさせてやるぞ。
そして、姉様が幸せになるように私が導くんだ!
以前より俄然闘志を燃やしながらステータスをオープンさせてみる。
[トーマス・ウィスタリア]500(2000)/1000(10000)
ん???なんだろうこの表示の仕方。
数値を疑問に思うと同時に「!」が点滅していることに気がついた。
お読みいただきありがとうございます。




