「31!」
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「ルータス様……」
マリーは目を大きく開きながらルータス様の名前を呟いた。信じられない光景を見ているような、そんな雰囲気がある。
ルータス様の方も、すごい告白を聞かれてしまったからなのか顔を真っ赤にして固まっていた。
「ルータス様、その、本当に、私を、好きでいらしたんですか」
「……そうだ。ずっと、伝えてきたはずなんだがな」
ルータス様はマリーの方に近づき、先程マリーが落とした教科書などを拾う。
「あ、ごめんなさ……」
「マリー」
膝をついたままルータス様がマリーの手を取った。
「やはり私のこと嫌いか?そんな、泣くほど嫌なのか?だったら、やはり……婚約は」
「や、ち、違います!」
「しかし、婚約が決まってからずっと怯えているようだ。ずっと、ユリエスタとの婚約を戻した方がいいと言ってきていただろう」
「ちが、違います。ただ、私、私はルータス様の妻にはふさわしく、ないと、思って、しんぱいで、つらくて」
「なぜ?」
「だって、ユリのように、う、美しくないし……不器用で、鈍臭いし、隣に立つのが私では」
マリーが泣きながら必死に言葉を繋いでいると、ルータス様がマリーを抱きしめた。
「マリーがマリーでいてくれるだけで、私が頑張れるんだよ。だから心配することなんて何もない。ただ、私の事が好きなのであれば、この婚約に、きみ自身からも許可が欲しい。マリー……」
「ルータス様……」
ルータス様がマリーを抱きしめる腕を少し緩めながらマリーに問いかけた。
「私は……」
「ああ」
「私も、ルータス様と結婚したいです、やはり、あなたと一緒に、生きて行きたい!」
「ああ!マリー!やっと、きみを手に入れた!」
私は、おめでとうマリーと思いながらとても気になっていた情報をゲットするため、ユリエスタ様に声をかけていた。
「ユリエスタ様、ちょっといいですか」
「なによ、今いいところなのに」
「ごめんなさい、どうしても気になって」
「なに?」
「ルータス様っていくつなんですか」
「え、今?その質問必要?」
「ええ、気になりすぎてこの光景に集中できません」
「仕方ないわね、ルータス兄さまは今16歳よ」
「16歳、なるほど、貴重な情報ありがとうございます」
「ええ」
正直恋というものがどういった存在なのか今一理解できていない私は、この光景のマリーとルータス様が幸せな事しか良く分からない。
でも、ルータス様がずっと前からマリーを気にかけていた事はこの光景を見ただけでも良くわかった。
なのに何故マリーはルータス様が自分を好きでないと思っていたんだろう。側から見ていても絶対に大切に思っている事は分かるはずなのに。
ルータス様は今16歳、10年近くを2人は過ごして来たはずで……。
それで、ずっとマリーが誤解していたのだろうか。
ユリエスタ様のことをルータス様が好きだと?
でも、このユリエスタという人物はそれに気がついて訂正しそうな雰囲気がある。
何度も2人から訂正されてもなお、婚約するまで気がつかないなんてあるだろうか。
やはり、繰り返す世界というのが重要なのかもしれない。
そして、その世界の住人は恐らくマリーだ。
一体その世界は何を繰り返していたのだろうか。
彼女にとって、つらい物語だったのだろうか。
例えばそう、ルータス様とユリエスタ様が結婚するような……そんな世界。
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