「25!」
ブックマークや評価ありがとうございます。
ご指摘いただいております年齢についてですが、私も低く設定しすぎたな、と思っておりますので
どこかのタイミングで変更する可能性があります。
その時はお知らせいたしますのでよろしくお願いいたします。
「あっ、ご、ごめんなさい!ノックをしようと思ったら、扉が開いていて。そのまま開いてしまって」
あわあわとしている彼女は、両手で眼鏡を支えつつ顔を赤くしながら謝っている。
え、か、可愛い。
可愛いぞこの子。姉様の尊さとは違う、こう、胸にグッと来るかたちのそう、言うならば家に不意に現れたリスのよう。私はにやけそうになる顔をスッと真顔に戻した。
「マリーそんなに慌てなくても大丈夫だから」
「は、はい。すみません……」
マリーと呼ばれた少女は中に入ってくるとスカートの裾を少し持ちながら
「マリー・コーエンと申します。ホースタリア子爵家長女で、その……」
「先日私の婚約者になったんだ」
サスライド様がとっても嬉しそうな顔で私たちに報告してくる。そしてやはり、マリー様の肘の辺りに「!」がある。
大丈夫、後でじっくりと見てあげるからね。
そう思っていたらマリー様が突然顔を両手で覆った。
「やはり、やはり、私では……。ルータス様、やはり、私ではお美しいルータス様の婚約者に相応しくありません!今からでも妹に」
「何を言っているんだ!私はマリーがいいんだ」
「でも!」
「マリー!」
何やら言い争いを始めた2人を、何を争っているんだろうと首をかしげて見ていると、何かで視界が遮られた。
「何をするのですか」
「リテーリアちゃんにはまだ早いかなと思って」
顔の前にルイ・アントンの手が伸びて、2人の姿が見えない。ニッコリと笑う彼はなんだか楽しそうだ。
「私で早いと言うならばリューだって……」
と、言いながらリューの方を見ると、頬づえをつきながら黙って2人を見ていた。なんだろうか、何か、いつもの軽い雰囲気ではない。
「リュー?」
「へ?あ、あーなに?」
「どうしたの?」
「え、いや?なんか…………んー、なんでも」
いつもの歯切れの良いリューはどこへ行ってしまったのか。動揺しているというよりは疲れている雰囲気を出しながら、明確に答えを出さない彼に眉を寄せる。
マリー様を好きだったのだろうか。それならばこれは辛い場面になるだろう。
しかし、そんな感じでもない。
「なんだよ」
「変なリュー」
「うるさい、ただ、」
……良かったなと思っただけだ。
そう呟いた言葉は、空耳だったのかと思うほど微かなもので、聞き返すのはいけない気がした。
その時、言い争いが終わったのかとても良い雰囲気になった2人が近づいてくる。
「ごめんなさい、皆さま、挨拶も早々に……」
その瞬間、ずっとうずうずしていた私がすっと前に出た。
「マリー様、私はリテーリア・クラスウィリムです。」
マリー様に突撃し、彼女の両手を手で包み込む。
「あの、私……女のお友達が欲しかったのです!なって、いただけますか?」
少しだけ背が高い彼女に、上目遣いでせまる。
話していたから我慢していたが、是非とも友達になりたいと思っていた。あれだ、一目惚れだこれは。
姉様に加え、この可愛い人とも友達になって、私の楽園を作る計画なのだ!
「とんでもない!私からも、その、お願いしたいくらいです」
「やっ」
「や?」
「やったー!」
首に飛びついて抱きつく。
これで私の学園ライフもきっと順調!
こんな可愛い友達と姉様と。
ああ、想像だけでも幸せな空間!!
「あ、あのリテーリア様」
「リテーリアで構いません!マリー様!」
「で、では、私もマリーと」
ふふ、女の子って柔らかいわ。そしていい匂いがする。
「はい、マリー!私は幸せです!」
マリーにぎゅっと抱きつきながら私は幸せに浸るのであった。
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「ひどいですよ」
「マリー嬢が苦しんでたんだよ、あと、ルータスがすごい目で見てたぞ、殺されたかったの?」
いや、殺されたい訳ではないのだけど。
あの後私はリューによってマリーから引き離され、ルイ・アントンに椅子に座るように促されたのだ。
「べ、別にすごい目で見ていた訳ではない!ちょっと、うらやましかっただけだ!」
サスライド様が真っ赤な顔で反論し、マリーが心配そうに視線を泳がしていた。
「…………」
羨ましかったなら今度やったらいかがですかと言おうとしたが、サスライド様の力で抱きしめたらマリーが死んでしまう気がしてやめた。
そもそもここに来た理由はトーマス殿下の料理の質問だった。
ぶすっとした顔をしながら私はここに来た目的の質問をする。
「それで、トーマス殿下はどんな料理をお作りになるのですか?」
その質問をすると、サスライド様とリューとルイ・アントンが目を合わせ、少しだけニヤッとした。
「その質問をしたからには、リテーリア嬢も隊員希望ということだな」
「は?」
隊員て、なんですか?
お読みいただきましてありがとうございます。




