「2!」
この作戦のためには私がまず考えた事は、
私の憧れのあの人の為に頑張りたいんだけど、1人だと心細い!姉様!
という舞台。
なぜその舞台にしようと思ったのには理由がある。
私はダンスが割と好きでちゃんと取り組んでいる為、今更姉様を引っ張り込むのは難しい。ということ。
私は今から姉様と一緒にダンスをやる理由がほしいのだ。
でも、この屋敷からほぼ出ることがない私に好きな人が出来るはずもない。つまりは作るしかない。
どうやって作るのか。
「エリサ!下町におつかいに行って欲しいの!」
「どうされたのですか、そんな急に」
「ああ、エリサ、私新しい本が欲しいのよ」
「新しい本でございますか?」
侍女のエリサを呼んで早速下準備をしよう。
慌てた様子のエリサの腕を引いて下町に行ってもらいたい理由を伝える。
ここの屋敷には無い、恋愛小説という名の本だ。
「そうなの、新しい種類の本を読もうとおもうの!」
現実の王子様はいらない。架空の王子様を作ればいい。それには最適の本を選んできてもらわねば!
エリサは私の7つ上の侍女(見習い)であり、小さい時から一緒に育った幼なじみでもある。色々な秘密も共有してきた。
今回の作戦についても簡単に説明し(もちろん姉様とダンスと裁縫をしたい事だけ)、こんな王子様が居そうな本がいいの!と興奮気味に話す。
「そうしたら、姉様はもう無敵だと思うの!」と。
するとエリサは首をかしげて寂しそうな表情をした。
「ですが、アネモア様は完璧になられない方が良いのではないでしょうか」
「えっ、なんで?」
「……本物の、女神になってしまわれる気がします」
「………あら、私はならないって言うのね!」
「…………お嬢様は女神というか、妖精ですね」
静かに佇む方じゃないでしょうと言いながらお茶を用意し始めたエリサは、本について色々聞かせてもらいますよと私を椅子に促す。
口から出かかった文句はうやむやになったが、本については説明したい。私は大人しく椅子に座ることにした。
「さっき簡単に説明したけど、とてもかっこいい王子様が登場するお話がいいの。女の子はダンスと裁縫がとても上手で私ももっと上手になりたいと思うようなものがいいわ。できれば最近流行っていて、数日で読み終えられて、姉様にも勧められる本ね!」
そう言うとエリサはにこりと笑いながらこう言った。
「はい。かしこまりましたお嬢様。私はすでに一冊の本が頭に浮かんでおります。すぐにご用意できるかと」
「なんてステキなのエリサ!あなた本当に最高だわ」
その夜、最後の挨拶を終えたエリサは、「実は」と言いながら一冊の本を取り出した。
「実は、渡したいとお伝えしていた本は昨日私が読み終えた本なのです。」
明日本は買いに行けるが、この本の素晴らしさを早く伝えたいという気持ちが先走り、恐れ多くも本を持ってきてしまった。私が読んでいた本でも良ければすぐに渡したい。とのこと。
「エリサ……」
「……」
「あなた本当にすてきなんだから!」
「お嬢様!」
「早く持ってきて!」
「はい!こちらです!」
その夜私は本の世界に旅をしてしまったため、徹夜をすることになった。