RPGという退屈と仲間と暴力
メルティーナの叫びが聞こえたのか、ウラメンは小首をかしげた。
「おや、失礼しました。名乗っていませんでした、私、ウラメンと名乗ります」
「できの悪い翻訳文みたいなしゃべり方ね」
鼻をならして笑うマキアにウラメンがウインクを返す。
「ツン減乳さん、もっと上手にツっこまないと没個性ですよ。ただでさえ、手あかまみれのキャラクターなんですから」
ほらほら、ファイト一発!個性爆発!と、ウラメンはマキアを煽る。
「泣かないで、マキア。ね、向こうのベンチで少し休もう?」
そういいながらリクトは、顔を真っ赤にし小刻みに震えるマキアの手をひく。その二人を尻目にリフェンテがウラメンを睨む。
「お前、なんなんだよ」
「も、もしかして新しい仲間の方ですか?」
「こんな奴が仲間ですって?!」
マキアが復活し非難するようにメルティーナを睨む。
「いえ、違いますよ」
ウラメンは笑顔のまま首を横に振る。
「なぁ、俺はリクトと違って気が短いんだ」
リフェンテはパキパキと指を鳴らしながら、ウラメンより頭ひとつ分高い身長で威圧する。
「存じ上げております」
「そうか」
言いおわらないうちに、リフェンテはウラメンに殴りかかった。ウラメンは張りついたような笑顔のまま手をひろげる。
「私とあなた方では次元が違います、おわかりになりませんか」
ひらり、と薄い体を傾けただけで、ウラメンはリフェンテの拳を避ける。紙のように軽そうな身のこなしにリフェンテは舌打ちをする。
いや、しようとした、が正しい。舌打ちをしようとしたリフェンテの顎をウラメンの左足が蹴りあげた。
「ぐぅっ!」
「リフッ!!」
「か、回復します」
メルティーナが空を仰ぐように倒れたリフェンテに駆け寄り、呪文をとなえる。マキアが再度杖をウラメンに向けるのをリクトが制する。
「リクト!こんなやつに優しくしてどうするの!」
短く叫ぶマキアにリクトは小さく首を振る。
「リフが仕掛けたことだとしても、親友を傷つけられて笑っていられるほど、僕も気は長くないんだよ」
リクトは今までの笑みを捨て、剣をかまえる。
「丸腰の人に悪いとは思うけど、ごめんね」