RPGという退屈のウラメン
そこには、大量のウラメンがあった。そして、そのどれもが動かない、死んでいるのだ。いや、殺されたが正しい。看板のような形をした杭に打ち抜かれて、何人ものウラメンと似た姿のものが地平を埋め尽くす。
中には何ヵ所も杭に打たれ原形を留められず、わずかに人間であろうと予測できる程度の肉片だけが残っているものもある。
息をのむ他の者たちに気がつかないのか、その悲惨な光景のなかを同じ姿をしたウラメンが花畑でも歩く気安さで進んでいく。
「例えばこれが」
花を摘むように何気なくウラメンは持ち主から千切れた腕を持ち上げる。
「金を稼ぐにはグッズ展開だ!といったウラメンです。彼は・・・少々やり過ぎてしまいましたが、『マスコットキャラクターを創る』という部分は使えるので私の足にしました」
興味を失ったようにウラメンは腕を持ち主に投げつける。確かに片足がない。
『既存の主人公像からの脱却』というところから、主人公の年齢を。
『主人公を中心に構成される人間関係の単純さの打破』というところからBLGL要素を。
すらすらと説明しながらウラメンは自身の体の至るところを指し示す。
「な、何、これ・・・」
「この世界のウラメンですが」
きょとんとしたウラメンが、不思議そうに登場人物たちをみつめる。その目が何を映しているのかわからない。
「そして、私がこの世界唯一の生きているウラメンです」
同胞の臓物を踏みつけて、歩くたびにズボンの裾を血で染めて、赤い紅い花畑の中でウラメンは少し誇らしげに胸をはった。
いまや、世界は2色に割れている。ウラメン達が彩る赤と、登場人物たちが何もないと嘆いた白と。
「面白いって、なんだ」
かすれた声で元主人公はやっと呟いた。
「大丈夫、みなさんの世界は『面白く』なりましたよ」
赤い世界に杭が降る。雨のようにはじめはポツポツと、次第に数が増えてくる。
始まりましたね、とウラメンが空を仰ぐ。
「ですが、1つだけ不安もありまして」
ウラメンの近くにも杭が刺さる。すでに刺さる大地も見えないほど肉塊で埋め尽くされているその世界はさらに色を濃くしていく。
「ここだけの話、私、生まれたのが深夜でして」
ここで、死んでいるのもだいたいそうですが、といいながら初めてウラメンが人間らしく恥ずかしそうに頬を掻いた。
「深夜に生まれた私は、翌日見直されると…」
言い終わらないうちに、杭が降ってきた。
ぐしゃっと、紅い花が咲いた。