RPGという退屈と混乱と悲鳴の裏切りと平等
「国が滅びてるって、どうやって俺たちは支援をうけるんだ?金も名声もないんだぜ」
「支援?必要ですか?大国は滅びていますが小さい村は残っていますよ」
「勇者でさえない四人組に誰が補給物資を渡してくれるのよ!私たちに畑を耕せとでも?」
「勇者の称号のおかげでみなさん、協力してくれたんですよぉ」
3人の必死な様子にウラメンは考える。
「なるほど、そう考えると勇者の称号は必要ですね。でもグランドクロス級の大国は滅びてますし、どうやって、コネも権力もないチョビヒゲさんを人々にわかりやすく勇者と受け入れてもらうか・・・」
新主人公を眺めながらしばらく考えたあと、ぽんっとウラメンは手をうった。
「勇者の印を与えましょう」
油性マジックを胸のポケットから取り出し、毛根が死滅しはじめている新主人公のおでこに『勇者』と書きなぐる。
「これでよし」
「どうしてそれでいいと思ったわけ?!」
「減乳さんは漢字が読めないのですか」
『勇者』の横に『ゆうしゃ』と加える。
「悪ふざけがすぎるだろ!」
「こ、この人を私たちが連れて歩かなきゃいけないんですかぁ?」
地団駄を踏みながら抗議する3人にぼそっと、
「生きているだけましだよ、君らは」
聞こえた声に振り向けば、グランドクロスの新王が大の字に地面に寝ていた。
静まりかえる皆の耳にドラゴンの咆哮が遠くに聞こえた。
「では、異論がないようなので続けます」
「今の意見タイムだったのか?!」
「はいっ、2人とも皆さんに挨拶してください」
どっこいしょと新主人公が玉座から立ち上がり、新王が無言で玉座につく。
「今から儂はリクト!勇者の印が額に刻まれし主人公じゃ!」
「今から僕は亡国グランドクロスの王、シュトルヘル34世。ちなみにもぅ死んでる」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
誰も、何も言わなかった。ウラメンと新主人公を除き全員目が死んでいる。
「あとは、そうですね、BL入れたので男女平等にGLもいれましょうか」
「平等?」
「減乳さんと爆乳さんは適当に絡んでもらえますか、こう、背景に百合が咲く感じに」
「嫌よ」
「マキアさんは大切なお友達です」
「では、新主人公さんと絡み・・・」
「これからメルのことお姉さまって呼ぶわ!」
「えぇ、私もマキアさんのことお姉さまって呼びますね!」
「ねぇ、お姉さま、手を繋いで向こうへ行くわよ、二人っきりで!」
「はい、お姉さま。もぅ、私には貴女しかいません」
フフフフ、と手を繋いでマキアとメルティーナはスキップというには大股でウラメンたちから離れていく。
「素晴らしい!自主的にやっていただけるとは。私はこの世界に来て初めて感動しました」
ウラメンは、それぞれ距離をとって飛び回るドラゴンと、地面に寝そべり愚痴を言い続けるグランドクロスの王と、うとうとと舟をこぎながら椅子に座るリクトをみて、盛大にため息をついた。