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ウラメン  作者: カガワ
10/16

RPGという退屈と混乱と悲鳴の裏切り

BL(ブラ)組はこれぐらいにして」

「ついに魔王とさえよばれなくなったぞ」

「リフ、それどころじゃない、今度は直接僕らにくるよ」

「そうですね、まず」

 4人はウラメンと目をあわせないように、あさっての方向に目をやる。

「主人公さんはありきたりすぎますね。なんなんですか、魔王の分身って」

「僕が決めた訳じゃないけどね」

「それ、それですよ。あなたの言動は全て平均値すぎます。金太郎飴のようで不愉快です、へくっち」

「そ、そう・・・」

「分身も、せめて伏線があればよかったのですが」

 ドスンと、1匹のドラゴンが5人の近くに降りる。明るい色をした魔王ドラゴンだ。

「伏線ならあったぞ。3倍速で流していたから一瞬だったが」

 はて、とウラメンが首をかしげて。ペンを振る。先ほどまで流れていたあらすじがの映像が巻き戻る。

「リクトが、勇者の称号を与えられた日、同じように我の城でも宴が催されていたであろう」

「一人称と話し方が変わりましたね、BL(ブラ)ゴンさん、いいですよ、その調子です」

 ぶふっとドラゴンは得意気に鼻を鳴らした。それでいいのか・・・と、リクトは思うが黙っておくことにした。

「そこから再生するのだ」


『タイトル未定』

 リクトは広場に集まった国民たちを見下ろす城のバルコニーに立つ。グランドクロスの王はリクトを示す。

「彼こそが、この世界の希望、勇者のリクトである」

 国民たちの喝采がリクトを包む。リクトは王より賜った剣を掲げる

「みなさん、僕は必ず魔王を討ち滅ぼし、この世界に平和をもたらします!」

 3人の仲間たちはリクトの後ろで視線をかわす。口にしなくとも皆の気持ちはひとつだった。


 同日、魔王の居城でも盛大な宴が行われていた。

「陛下、おめでとうございます」

「どうぞこちらをお納めくださいませ、陛下」

「すでにこの世界は陛下のものといっても過言ではないですな」

「どこまでも陛下についてまいります!」

 口々に魔王を賛美する言葉が聞こえてくる。



「これは我の誕生日を祝う宴だ」

「は?」

「そして、リクトもこの日が誕生日だったな」

「あ、うん、そうだね。でも、まぁ勇者の到来とか言われているところで、今日、僕の誕生日なんです!とか言いづらかったから黙っていたけどね」

「そう、つまり我とリクトは同じ日が誕生日だったのだ」

「いやいやいや、まてまて!この宴が誕生日パーティー?人間の街を落としたとか、魔王復活とかじゃなくて?」

 リフェンテが驚いた声をあげる。

「うむ、もう少しわかりやすくするとだな」


 同日、魔王の居城でも盛大な宴が行われていた。

「陛下、お誕生日おめ!」

「誕プレだよ、陛下!」

「世界中のみんなが陛下おめ!っていってるよ」

「陛下はズッ友だよ!」

 口々に魔王を賛美する言葉が聞こえてくる。


「と、いうわけだ」

「映像にはないですが、みんなでハッピーバースデーを歌ってケーキ食べましたね」

 いつのまにか、カランドラゴンも地面に降りていた。

「一応伏線はあったんですね、でもこの程度とは」

 ウラメンはまた紙に何かしら書き付けている。

「やはりクビにしましょう、主人公さんは主人公辞めてください」

「いや、さすがにそれは、ねぇ、みんな?」

 リフェンテは腕を組み、マキアは顎に手をあて、メルティーナは頬に手を添えてそれぞれ考えているようだった。

「み、みんな?」

「ご安心を、すでに新しい主人公は考えてあります。えいっ」

 ウラメンがペンを振るうと、グランドクロスの王シュトルヘル34世が玉座に座ったまま現れる。

「こちらのチョビヒゲさんです」

「草はえる」

「嫌だよ、僕の跡目がこんなおっさんだなんて!」

「失敬であるぞ、儂はまだ77才だ、草はえる」

「そうです、失礼ですよ、元主人公さん、チョビヒゲさんが一生懸命考えた若者言葉を繰り返しているのに酷いことをいわないように」

「俺だって嫌だぞ!老後の趣味感覚で勇者はつとまらねぇよ!!リクトこそ、主人公だ!」

「私も絶対に嫌よ、こんなおっさんの胸に抱かれて死ぬなんて」

「私も主人公はリクトさんがいいです!」

「みんな・・・」

 数秒前に見たかった光景をみてリクトは感動した。新しい主人公を見てから考えようとしていた気がする、と頭の片隅で警告するものがあるが、リクトは無視する。

「ありがとう、みんな!僕は絶対に主人公を諦めないよ!」

 勇者の剣をぬき、あの時のように掲げる。


「元主人公さんには、グランドクロスの王になっていただきます」

「みんな、魔王討伐がんばって。はい、新主人公さん、これ勇者の剣、しっかり持ってね、重たいからね」

 リクトは掲げた剣を玉座に座ったままの新主人公の手に握らせる。

「最低だぞ、リクト!」

「裏切る前に裏切られるとわね!見損なったわ!」

「リ、リクトさん・・・」

「あ、リクトっていう名前も新主人公さんに譲るね!」

「我こそリクト!苦しゅうないぞ、3人とも近うよれ」

「ちなみに新主人公のチョビヒゲさんは歳が歳なので、歩く距離は1日に3キロが限界です」

「足手まといにしかならねぇじゃねぇか!」

「ちなみに剣がないと歩けません」

「杖がわりってことですかぁ?」

「歩くことがやっとの奴をどうしろっていうのよ」

 新勇者一行のテンションが地に落ちる。

「まぁまぁ、みんな、元気をだして!すごく斬新で面白いと思うよ、ね、頑張ろう!僕、支援を惜しまないよ」

 一方でグランドクロスの新王のテンションは天にのぼる。玉座に座っている新主人公から、マントやら装飾やらを手際よく奪って身に付けていく。


 かつての仲間が天地に別れたことなど気にもとめずにウラメンは続ける。

「魔王はノール村襲撃前に、主要都市を破壊しています。その方が世界征服する上で効率的ですから」

「変なところでリアリティーを求めるなぁ」

 ハハハとグランドクロスの新王は笑う。

「グランドクロスももちろん崩壊しています」

「そっか、主人公をクビにするって死刑宣告だったんだね」

 ハハハとグランドクロスの新王は泣いた。残ったのはかつての仲間の冷たい視線のみだった。

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