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妹勇者は魔王よりも兄に会いたい!  作者: 狼猫 ゆ狐
妹勇者は闇組織に“おこ”です
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闇組織を襲撃する

 夜の町を二人は歩く。


「はぇ~、まだ夜なのでそんなに時間が経っていないと思ったら、三日後の夜だったんだ……」


 ルキリヤは自分の勘違いに気付いた。


「うん? だとしたら三日間、敵は何もしてこなかったのですかね?」


 だとしたら運が良かった、とルキリヤは楽観的に思う。


「そんなわけ、ない、でしょ?」


 クテイがジトーとした目を向ける。


「へ?」


「襲撃……された、よ?」


 クテイは、やれやれだぜ、とでも言うように腕を上げ、頭を振る。アメリカ人のリアクションのように。

 そのオーバーな動きと、無表情が相まって、いっそ可愛らしく見える。


「いやいやいや! じゃあ、なんで私たちは無事なんですか!

 闇組織のメンバーはただのチンピラとは訳が違いますよ!?」


 ただのチンピラにさえクテイは勝てるのか怪しいが、と心の中でルキリヤは付け足す。


「それは、聞かない、方向で」


 クテイはそーっと目を逸らす。


「……」


 この少女は最早よく分からないとルキリヤは思った。


「というか、さっき言ってた敵の本拠地、クテイさんは分かるのですか?」


 さっき私に向かって散々言っといて分からないはず無いですよね……?

 と言外に聞く。


「ん。もちの、ろん。じゃなかったら、私たち、どこ向かって、る?」


「……それもそうですね」


 クテイの歩みに迷いはない。


「ところでその耳、どっちが、ほんもの?」


 クテイが移動中の世間話に、ふと話しかける。


「えっ? …………ああ。これはですね、どっちも本物ですよ」


 ルキリヤはピョコピョコと、エルフ耳と狼耳を動かす。

 何故か連動して狼尻尾もふりふりしている。


「……」


 クテイは沈黙する。

 更には、ぷるぷると震えている。歩きながら器用なものだ。


「? どうしましたか?」


 不思議に思ったルキリヤが尋ねると、



「もふもふ、ふにふに、したいぃ……!」


 聞かなければ良かったとルキリヤは思った。




 ***************




 暫く歩いていると、とある建物の前にたどり着いた。


「ここが……?」


「ん。本拠地、なのだよ」


 胸を張ってクテイは答える。

 内心は、これで間違えてたらとんでもなく恥ずかしいよね……、と思っていることなどおくびにも出さずに。


「えっ、えっと、それじゃどうしますか……?

 今からでも冒険者に依頼を……

 ああ! 私はお金を持っていないんだった!」


 ルキリヤがアワアワと慌てふためく。

 本当はここに来る前にすべき話だろうに。


「そんな、に、扉の前で騒いだ、ら……」



「ああ? 誰かいんのか~?」



 建物から大柄な男が出てくる。ルキリヤの声を聞き付けたようだ。


「言わんこっちゃない、よ……」


 クテイはルキリヤの空気の読め無さに頭を押さえる。

 なんでこんなにも格好よくて綺麗な見た目なのに……残念すぎる、と。

 実は、クテイが宿屋の部屋で差し出したご飯も一瞬で食べ終えて見せたのだ。残念だと思ったのは、その要因も少なからずある。

 この人、こう見えて食いしん坊キャラだったの……? と。



「はぅあ! どどどど、どうしましょう? 見つかっちゃいましたよ!?」


 ルキリヤは尚も慌てる。

 そんな様子でどうして一人で乗り込むなんて言えたのだろうか……


「うん~? あっ! お前は俺らのターゲットの、エルフと獣人のハーフじゃねぇか!」


「ば、バレました!」


 当たり前だ。ルキリヤは変装などしていないのだから。

 クテイは何時ものように外套を着ているが。

 大男はルキリヤを捕獲しようと動き出そうとする。

 すると、


「もぉ、だまってて……」


 クテイが大男の前に歩みでる。


「うん? なんだァちびっこ?」


「あなた、逃げた、ほぉがいい、よ?」


 クテイはそう告げる。


「あん? なんだと?」


 当然、大男には疑問符が。


「いまから、この組織、()()()()


「ハア?」


 大男は流石に呆れる。


「にげ、ないの?」


 クテイは、こてんっと首を傾げる。

 すると、外套から青く澄んだ目が覗く。


 大男はその目にある()()に一瞬気圧されたものの、こんな小さな女の子に自分がビビったのかと、次の瞬間には苛つく。


「へっ! 誰が逃げるか! つーか、お前、今顔が見えたが、中々可愛いじゃねぇか。お前も一緒につかま……」


 大男は自分を鼓舞するが如く、大きな態度にでる。


「そっか。残念。じゃ、ちびっとだけ、痛いよ?

 …………あと、ちびって言ったこと、おこ、だよ?」


「何言って……」


 ドカッ!


 大男は扉を突き破って吹っ飛ぶ。

 ルキリヤはずっと騒いでいたのを止める。開いた口が塞がらない。



「な、なんだ!?」

「どうした!?」

「うおっ!? お前、どこから飛んできた!?」

「こいつ、さっき出てったやつだ!?」

「気絶してるぞ!」

「誰がやりやがった!」


 建物の中にいた人間は大騒ぎだ。


 そんな中に、ズカズカと入ってくる人影二つ。

 一つはビクビクと、一つは堂々と。

 その人影の片割れ。堂々としている方、クテイは、


「どぉも。こんにちわ。襲撃者、でぇす♪」


 暴れたるでぇ! と笑う。


 

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