クテイ達の野宿。そして……
あー、早くクテイ兄と引き合わせたいなー。
作者的にはそこからが本番だと思うんだよなー。
【港町ミラン】への道すがらクテイから魔法を教えられているルキリヤ。
まずは魔力の感知からと、座禅を組まされピこられているわけだが、
「あっ! ちょ、これじゃないですか!? 魔力って!」
どうやらその日のうちに魔力を感知出来るようになったようだ。
「…………ちっ」
ぴっこぴこはんまぁ先輩をしまいながら舌打ちするクテイ。
「今! 今舌打ちしましたよね!? 叩き足りないんですか!?
あんだけ叩いといて!」
ルキリヤが座禅をやめ、立ち上がりなから言う。
慣れないことして足が痺れたのか、心なしか生まれたての小鹿のようだ。
「そんなこと、ない……?」
「疑問系!?」
やはり騒がしい。
「ん。つぎは魔力操作だけど、これは日常で出来る。
体内の魔力を動かすことをひたすらイメージ」
焚き火に薪をくべながら言うクテイ。
既に夜になっている今、クテイの顔が火に照らされてオレンジ色に見える。そのアホ毛のある金髪は光が反射して煌めいている。
「うん? いめーじ?」
いまいちピンとこないらしいルキリヤ。
ルキリヤの銀色の髪もまた火に照らされて煌めいている。
「そ。いめーじ。だけど、焦らなくていい。半日で魔力感知出来るようになるの、かなり良い方」
クテイはルキリヤを褒める。
この修行を始めたのが夕方で今は夜中だ。なので半日。
あの森は強行突破で早朝から夕方までの時間で抜けたのだ。
本当なら何日もかかるのだろうが。
これもクテイとルキリヤだから出来たことである。
「え! ほんとですか!」
その少しつり目がちな目を輝かせるルキリヤ。
「ん。普通は一週間とか、長いと何年も」
比較対照を得て更に目を輝かせる。
「ちなみにクテイさんはどのくらいですか?」
聞かなければいいのに聞いてしまうルキリヤ。
「んー、十分?」
クテイは思い出すように顎に指を添えて、答える。
「……へ?」
「あ、おにぃちゃんは意識した瞬間らしい」
「…………はい?」
「まあ、何故かおにぃちゃん、出来て当然みたいな感じだったけど」
ルキリヤは思う。なんだこの兄妹は? と。
「ん。そんなことより、これからは四六時中イメージ。
魔力を淀みなく動かせるようになるまで。この修行には、終わりはない。何処まででも高められるから」
魔力を動かすのが速ければ速いほど、また瞬時に出来ると、それは魔法の発動の早さに直結する。
「終わりはないんですか……」
「そ。だけど焦る必要は、ない。四六時中修行でも、やめるときはやめる。メリハリ」
「はい。分かりました」
それからルキリヤは暇をみて魔力を動かしてみることにした。
「ん。それじゃ、今日一日携帯食しか食べてないし、夕ご飯にしよ」
クテイは言うと、異空間から食事を取り出す。
「おー! ってあれ? スープから湯気が」
異空間から取り出した食事は温かかった。
「ん。私の異空間、調整が出来る。今のは、時間を止めてた。
ちなみに、これ、宿屋のおばちゃんの作ってくれたやつ」
「便利ですね……」
「ん。便利」
そして夜はふけていく。
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【港町ミラン】にて。クテイ達が町に向かっているその日の昼頃。
この町は漁業が盛んであるが、遠くの地や島からの輸入品が届く町でもある。
「なあ、この荷物は何処に置けばいいんだ」
港で船からの荷下ろしをする男達。
海の男らしく日焼けした筋肉を晒している。
「あー、それはあそこの隅に置いといてくれ」
「わかった」
続々運び込まれていく。
何時も通りの光景。しかし今日はそれだけではなかった。
とある荷物が港町ミランにやって来た。いや、やって来てしまった。
運び込まれ、そのまま隅に置きっぱなしにされた荷物。その場の人間から忘れ去られた荷物。その木の箱の蓋が外れ、中から細長いものが少し伸びてきた。
まだ誰も気付いていない。その箱から伸びている何かがまるで意思を持っているかのごとくうねっていることを。
まだ誰も気付いていない。その木箱の中身が後に大きな事件を起こすことを…………




