ルキリヤの修行
「ん。まぁまぁかなぁ」
「か、辛口ですね。クテイさん」
今は無事に森を抜けた街道の近く。二人が野宿する場所において、ルキリヤは目を閉じ座禅を組んでいた。
「いや、ちょっとこれ、キツいです」
「ん。がんば。もっと心を燃やせー」
「棒読み!?」
まあ、結局何をしているかというと、ルキリヤの魔法の練習であるが。
今ルキリヤはクテイに教わり魔力感知をしている。
クテイによって濃密な魔力漂う空間を造られ、その域でただひたすらに神経を研ぎ澄ますのだ。
「私も、魔力をルキリヤに向けて駄々漏らすの、ちょい、きびい」
だがそのおかげでルキリヤも魔力を大分つかめてきているわけであるが。
「でもこれ結構辛くないですか? なんというか、自分の意識が浮くというか。平衡感覚失うというか」
ルキリヤは今、自分の体が自分のものではないような、もしくは無重力空間にいきなり放り出されたような落ちつかなさを感じていた。
「そりゃあ、こんだけ魔力の濃いとこ、いるんだ、もん」
クテイは片手をルキリヤに向け、魔力を空気に溶け込ますように放出しながら言う。
「魔力の濃い、地域って、人によっては快適だけど、人によってはめちゃ酔う。その魔力の質によるけど」
そう、稀に魔力の濃密な森や山、湖等々がある。
そこは時には魔物の楽園に。時には妖精や精霊の楽園に。時には巨龍の住みかに。時には魔法使いの聖地にと、様々な姿を見せるのだ。
そこに漂う魔力は魔物にとって心地良いもの。木々や妖精、精霊に心地良いもの。人間にとって有益なものと、様々である。
そして、魔力は人によって質が違う。
なので、魔力の譲渡をそのまま行うことはあまり宜しくない。
その人にあわせて調整する必要がある。
そのように魔力にも質があるわけだが、その質が人に合うか、魔物に合うか、などの分別があるのだ。
「知ってますよ~。本で読みましたもの」
つらつらと説明するクテイにルキリヤが言う。
「む。生意気」
クテイは目をつぶるルキリヤに向け、とある物を異次元から取りだし、構え、
ピコ!
「ひゃい!?」
ルキリヤは思わず驚き目を開ける。
神経を研ぎ澄まし、魔力を感知しようとしていたら、いきなり頭を叩かれ、鳴った音はピコ! であるのだから無理もない。
「ん。集中!」
もう一度ピコられる。
「いて! って何ですかソレ!」
ルキリヤは大して痛くもない頭をおさえ、クテイの方を見ると、そこには……
「ふふふ……殺傷能力ゼロの“ぴっこぴこはんまぁ”先輩を舐めるな、よ……?」
何故か真っ黒なサングラスらしきものをかけ、肩に赤と黄色のハンマーらしきものを担いだクテイの姿が。
「…………もう一度言います。見ても分かんなかったです。
何ですかソレ!」
ルキリヤは目をぱちくりさせてから同じことを言う。
「だから、ぴっこぴこはんまぁ先輩」
グラサンを指で持ち上げ、目を露出し、ウインクする。
「だから、ぴっこぴこはんまぁ先輩とは、と聞いています」
ルキリヤは冷静に反応する。
「……………………ん」
少しばかりウケなかったことを残念そうに、グラサンをしまい、答える。
「……これは、おにぃちゃんとの『ピコ!』修行の時に作った、殺傷能力ゼロの武器。痛く『ピコ!』ないけど、当たったら音が鳴るから、分かりやすい。組み手を『ピコ!』するときとか、一本とった方の勝ちの時、音が鳴るから、ね。『ピコ!』
今は、修行で使うときも、あるぴこ。集中するときに、音が鳴っても集中力を『ピコ!』切らさないように、する」
クテイはぴっこぴこはんまぁ先輩を手に当て、ピコピコ鳴らしながら説明する。
「……意外と真面目でした。ネタかと思ってました」
ルキリヤは心底意外そうに言う。
「ん。半分、まじめぴこ」
クテイは返答する。
「……半分ですか。
というか、クテイさん、手慰みにパシパシと手にぶつけるのはいいんですよ。まだね。だけど本人までピコピコ言い出したら終わりだと思います」
ルキリヤは至って真面目に言う。
「……わかった……ぴこ」
「絶対半分以上ふざけてますよね!?」
しょんぼりするクテイにルキリヤはツッコんだ。
「というわけで、そのまま座禅を組んでて? 私が、ときたまピコるから」
クテイが夜営の準備をしながら言う。
「あっ、はい。やっぱり使うんですね。先輩」
「ん。もちの、ろん」
「ところで、座禅の意味はあるんですか? 魔法使うときって立ってしますよね」
「雰囲気」
「そ、そうですか」
「嘘。ほんのちょっとある。でも、長くなるから割愛」
「そうですか」
という会話もあったらしい。
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ところで、“ぴっこぴこはんまぁ”ってゆーくんの尊敬する某ありふれてる最強様でも出てた気がしてきました。
くっ! 所詮は二番煎じなのか……?




