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妹勇者は魔王よりも兄に会いたい!  作者: 狼猫 ゆ狐
妹勇者はお供に残念美人を連れています
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ルキリヤの出会い

新キャラ登場です!


 ルキリヤは数時間前を思い出していた。


 それはクテイによる魔法講義も終盤に差し掛かっている時のことである。


「―――ということで、魔力の感知、操作、放出、性質変換かな」


 ルキリヤは魔法を使う際、修得する際の手順を教えられている。


「自分の体の中、そして外の魔力を感知すること。それを自分の意思で動かすこと。体の中の魔力を外に出すこと。それの性質を変換すること」


「ちなみに、性質変換をしなかったら無属性魔法になる。これは適正なしでも使える魔法」


 クテイはすらすらと淀みなく話す。


「なるほど! 奥が深いんですね!」


 ルキリヤはメモから視線を上げ、相づちを打つ。


「ん。だけど慣れたら、無意識にでも出来る。それこそ、息したり、歩くみたく」


 頷きながら付け加える。










「以上ッ! 回想終わり!!」


 ルキリヤは自分の記憶から帰ってくる。


 ちなみにではあるが、全力疾走中である。


「く、クテイ、さんが、こんな、スパルタだなんて……!」


 森の複雑な地形を縫うように走りながら呟く。腰につけられている剣を揺らしながら。近くにクテイは見当たらない。

 しかし、クテイの代わりに後方には大きな熊型の魔物が四足でルキリヤを追っている。口から涎をダラダラと溢し、時々吼えながら。


 何故ルキリヤがこんな状況下に置かれているのかというと、


 あの講義のあとのこと、


「森の中を今日一日、一人で移動してみて♡」


 と、クテイに言われたからだ。

 勿論、クテイはハートなんてつけないだろうが。

 ルキリヤの脳内ではそう変換されている。皮肉混じりに。



「ハァハァハァハァ……

 ったく、何なんですか! まずは経験って! せめて、魔法を幾つか覚えてからとか、武術を覚えてからとか……!」


 走りながら愚痴るあたり、ルキリヤは意外と余裕なのかもしれない。

 講義をするだけして、魔法の仕組みを教えただけでルキリヤをほっぽりだしたクテイ。


「どう見たってあの熊に私、勝てないんですけど!?」

 

 振り返ってみる。

 そこには獰猛な唸り声をあげながら、木々を倒し、走っている。


 ニコッと笑いかけてみる。


 獰猛な、食欲に満ちた笑みが返ってきた。


「やっぱ無理ー!!」


 ルキリヤの叫びが森にこだまする。






「ハアッ!」


 

「へ?」


 後ろの方で女性の声が聞こえた気がする。

 ルキリヤはその自慢の耳で後ろを探ってから、そーっと立ち止まり、後ろを見てみる。


 そこには熊の死体の上に立つ、山羊のような湾曲した角に、天使の羽を黒く染めたような翼をもった美女が。


「アナタ、怪我はないかしら?」


 女性は濃い紫色に毛先が黄色っぽい胸元まで伸びた髪を手で払い、紫色の瞳をルキリヤに向ける。


「は、はい。あ、ありがとうございます……?」


 ルキリヤは少し茫然としたあとにお礼を言う。


「なんで疑問系なのよ」


 呆れたように女性は言う。


「えと、なんででしょう?」


 ルキリヤはえへっと笑う。

 やっぱり余裕みたいだ。


「アタシに聞くことじゃないでしょ……」


 至極当然である。


「ところで、なんでアナタ、こんなとこ一人で熊に追われてんのよ? 趣味?」


「趣味なわけないでしょ!?」


 ルキリヤのツッコミは今日も冴え渡る。


「あら? アナタ、犬系統の獣人とエルフのハーフ? 珍しいわね。趣味じゃないならなんであんな雑魚に逃げ惑ってんのよ」


 女性はルキリヤの種族に気付いたようだ。

 熊から降りながら言う。


「えーとぉ、私、実は……」


 ここでルキリヤは思い出す。自分が実はそんなに強くないことを他人に言ったことをクテイに、「ばかあ!」と言われたことを。


「うん? ……そういえばアナタ、そんなに強者の雰囲気がしないわね。

 ほんとに優遇種族?」


 核心をつかれる。ルキリヤはビクゥ! となる。尻尾は不規則に動き回っている。


「そ、それはぁ…………

 っと、そんなことより、貴女こそ種族は何ですか?

 というか、自己紹介がまだでしたね。私はルキリヤと言います。種族はお察しの通りです」


 話題をねじ曲げようとする。かなり強引だ。

 

 だが、ルキリヤ自身、この女性の種族が検討がつかなかった。

 相当数の本を読み漁った自負があるルキリヤでさえ分からないのだ。


「え? そうね。そうだったわね。アタシはティルエ。

 種族は、そうねー。アナタ、堕天使って知ってるかしら? 天使が堕ちるとなる。

 それの逆。悪魔から昇る、昇るであってるのかしら? まあいいわ。そうするとなる、昇天使ってのよ。

 いや、昇天使でなくて、堕天使って言ってもいいのかしらね。状態的には」


 ルキリヤの記憶には無い、昇天使というらしい。

 確かに人間が昇天して天使になる逸話はある。しかし、悪魔から天使になるなんて話、聞いたことがない。

 まあ、本当にそうであるならば堕天使でいいと思うが。


 ティルエは悪魔っぽい角やら、髪、瞳ではある。しかし、ルキリヤは半信半疑だった。




「ちょっ、何よその目は?」


 ルキリヤの半目が堪えたらしいティルエがたじろぐ。


「いや、だって、ただの人間でも天使に昇格するなんて話、極稀なんですよ? ましてや悪魔なんて」


 ないない、とルキリヤは首を振る。


 人族は稀に天使や仙人等に昇格することがある。

 更にたまーに、神格化する場合もある。

 

 悪魔は基本的に、悪魔の枠の中で昇格するのだ。下級悪魔(レッサーデビル)から中級悪魔(ミドルデビル)という風に。

 

「あるわよ! 悪魔だって善行つめば!」


 ティルエはフンっとそっぽを向く。

 そのツンとした態度から一転、


「と、ところで、アナタ一人でこんなとこに居て大丈夫なのしら? な、なんだったら、アタシが一緒に行ってあげないことも……」


 少しばかり頬を赤く染め、ティルエは言う。




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