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妹勇者は魔王よりも兄に会いたい!  作者: 狼猫 ゆ狐
妹勇者はお供に残念美人を連れています
11/29

二人の話し合い

「…………」


「…………」


 この場を支配するのは沈黙。


 静寂すら生ぬるいと言わんばかりに音がない。

 

 いや、音ならあるか。この場にいる人達が緊張のあまり唾を飲み込む音だけが。



「……ルキリヤ」


 この状況を作り出している当事者の一人、クテイが重々しく口を開く。


「……はい」


 対するは、もう一人の当事者、ルキリヤである。


 二人が作り出すこの空間は、その場にいる無関係の人達でさえ緊張させる。

 更に、クテイが口火を切ったことで緊張はピークに達する。

 ルキリヤの返事もただならぬ雰囲気だ。


 そして再びクテイの口は開かれる。




「ルキリヤ………………冒険、しすぎ、かも?」


「いやー!! 言わないでぇ!!」


 クテイの一言でルキリヤは錯乱する。

 エルフ耳を両手で塞ぎ、狼耳をぺたんとさせ、首を振り、いやいやをする。


「服を、買いに行っただけなのに、まさかそこまで……」


 クテイが追撃する。


「いやー! 違うのぉー! これはそういうことじゃないのー!」


 ルキリヤは、聞きたくなぁい! と、いやいやを続行。


「だい、じょぶ。私、悪くないと思う、よ……? 前衛的?」 


 クテイの口撃は終わらない!


「やめてぇー! 

 …………って! そもそもはこれクテイさんのお兄さんのせいなんですよ!?」


「……へ?」


 これは、まあ、そういうことだ。

 ルキリヤのボンバーヘッドをクテイが目にしたときの反応。

 場所は待ち合わせのカフェ。その場にいる人達はノリがいいのか、二人に合わせていてくれた。

 事実、最初にアフロルキリヤが店に来たときから皆そわそわしていた。そして、突然発生した事態に適応するとか、随分とプロ意識の高いモブである。  

 


「こ れ は! クテイさんのお兄さんがやったことですからね!?」


 ルキリヤは決して自分の意思はなかったと言う。


「…………おにぃちゃん?」


 クテイは先程までのふざけた雰囲気から一変。物凄く真剣な表情だ。


「ルキリヤ、教えて。詳しく」


 真面目な顔でルキリヤを見据える。 


「……はぁ。分かりましたよ。ほんとはもちょっと愚痴りたいんですけどね。


 …………ちょうど髪も元通りになりましたしね」


 ルキリヤが息を吐く。


 タイミングよく髪型も元のウルフカットに戻る。

 どうやらイイカンジは時間切れらしい。


「実は、かくかくしかじか……なんです」


「ん。イミフ」


 クテイにバッサリ切られる。

 それはそうだろう。いきなり会話中にかくかくしかじかなんて言われて、はいそーですかなんて答えない。


「そも、なにそれ?」


 クテイの疑問ももっともだ。


「わかりません。なんだか言った方がいい気がして」  


 ルキリヤ自身も首を傾げている。

 どうやら世界の強制力が働いたらしい。

 古きよき伝統のボケ。テンプレな流れ。


 それからは真面目に、ことの詳細を語った。




「……そんなことが」


「ええ。そんなことがありましたよ」


 ルキリヤは心なしかジト目である。

 クテイが関係ないのは分かっているが、どうしてもジト目にならざるを得ない、そんな複雑な気持ちなのだ。

 

「ん……。それは、おにぃちゃんが申し訳無いことを」


 クテイは取りあえず謝罪する。


「いいですよ、べつに。クテイさんが言うことじゃありませんって。今度お兄さんに会ったときにきっちりと借りは返します」


 ルキリヤの目はメラメラと燃えている。

 よっぽどアフロが恥ずかしかったらしい。

 この恨み、はらさでおくべきか、いやはらすべきだ。と言わんばかりに。


「ん。手紙があれば、探せたかも」


 手がかりがあれば、クテイの魔法やらなんやらを使えば探せた可能性もあった。

 しかし、


「燃えちゃいましたしねぇ……」


「ん……」


 クテイ兄。中々手の込んだ男だ。





「それじゃ。この町にいる意味、ないね。

 また、旅に出る、よ」


 クテイは諦めたように言う。


「そうですね」


 ルキリヤは(おおむ)ね同意する。


「旅の準備、もぉ、出来てる。次は、何処行くかだけど……」


 地図を広げ、悩み始める。


「あっ、クテイさん。私この町に行きたいです。ここ」


 ルキリヤは何を見つけたのか、地図を指差す。


「んー……、ま、いっか」


 クテイもそこで良いらしい。



「それじゃあ次の目的地は【港町ミレア】ですね!」


「ん。魚、食べる」


 兄を探すこの旅、観光と紙一重のときもあるのだ。

 時には別の目的が出来ることもある。

 寄り道をすることもある。

 

 そんなこんなで決めた目的地は【港町ミレア】である。


 そして、二人は注文したスイーツの登場によって話を切り上げることになる。 


 この時の二人は知らない。

 次の旅でまた新たな出会いがあることを……



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