そして、川柳ブームは終わった・・・
「お前、川柳も投稿してみたら」
友人はビールジョッキを持ったまま言った。
彼は俺が小説家を夢見て、『小説家になろう』に短編を投稿してるのを知っている。
「知名度が上がるぞ~」
サラリーマン川柳、トイレ川柳など受賞すれば確かに箔が付く。
「それに、金になるぞ~」
これはちょっと魅力だ。
大賞を取れば賞金30万円というのもある。
それに賞品も多様だし、
なによりも、川柳コンテストが多い。
「そんなショートショート、書いてないで、
川柳書けばいいのに」
俺は生粋の理系人間だ。
ネタには自信があるが、文章はダメだ。
言葉や文章にセンスがない。
川柳のような絞り込まれた言葉の選択は、アイデアや発想力ではどうにもできないのだ。
というのも、もう3年前に投稿していた。
やつには黙っているが、200作以上投稿している。
それで箸にも棒にも掛からない。
発想力には自信がある。
乱歩賞を絶対に取れるネタがあるが、なかなか小説にできないで困っている。
プロの小説家なら、100万円払ってでも買うだろう。
でも、自分にはそれを上手く表現できる文章能力がない。
そんなことは分かっている。
何か言い訳した。
俺は頭をフル回転させた。
「川柳ブームはあと3年で終わる」
俺は予言した。
彼はきょとんとした。
「川柳は狙われているんだ。
知らないのか」
「何に?」
「チェス、囲碁、小説・・・」
俺は神妙な顔をする。
「まさか、あれが・・・
AIか」
「そうだ。
もう着々と実用化に動いている。
すでにもう投稿されているそうだ」
小説が書けるなら、川柳など簡単に作れる。
良い作品かは別だが。
「あらゆ情報をネットで分析する。
世間の情勢、審査員やスポンサーの好みとか。
AIに人間が勝てるはずがない」
彼は驚くべき話にビールではなく、
ツバをごくりと飲み込んだ。
3年後、AIが作った川柳が大賞を取った。
そのAIはその年の川柳コンテストを総なめした。
その翌年、AIのコンテスト参加は禁止されたが、
AIに勝てないと知った人は、川柳から心が離れていった。